はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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馬鹿がつくほど真っすぐな男

久しぶりに、奥田英朗の小説を読んだ。『純平、考え直せ』(光文社文庫)
3度、本屋で手に取り、3度目で購入した文庫本である。
帯には「この青春 おかしくて、せつない」と断言するかの如く白い文字でかかれた通りの青春小説だ。帯のその下に、心魅かれるワンフレーズがあった。「馬鹿がつくほど真っすぐな男」もちろん、主人公、純平のことだ。
人間、馬鹿がつくほど真っすぐには、なかなかなれない。だからこそ、小説に求める。この間まで読んでいた『ペテロの葬列』の杉山三郎だって、下っ端やくざの純平とは対極にあるキャラだが「馬鹿がつくほど真っすぐな男」という点に措いては、一致している。『ペテロ』は、けっこう真剣に『純平』は、ケラケラ笑いつつ読んだのだが。

21歳の純平は、組の盃を貰って2年目。歌舞伎町を歩けば30mごとに声がかかる人気者だ。凄んで見せてもベビー・フェイスで嫌でも可愛がられてしまう。そんな純平が、他の組の幹部の命(タマ)を獲って来くることになった。

『やくざモノ』ではなく、きっちり『青春小説』に仕上がっているあたり、さすが奥田英朗! と、思わずにはいられない。
純平は、決行の時までの3日間、金と自由を手にする。そこで、様々な人に出会う。仕事がつまらなくて週末ごとに遊び歩いている同い年のカナ。教授を辞めて家族を捨て、歳をとってからようやくグレたのだと笑う無銭飲食常習犯の老人、西尾。五分五分の兄弟盃を初めて交わしたテキ屋のシンヤ。
そしてカナが流した書き込みから、やくざの鉄砲玉になろうとしている純平へ、ネット上でも多種多様な声が飛び交っていく。

鉄砲玉になる予定はないが、3日間だけ、金と自由を手にして、その後何もかもを失くすとしたらと、チラッと考えてみる。3日間かぁ。自分は、いったい何をするんだろう。だが、チラッと考えただけで、すぐにやめた。雪に閉じ込められた、この3日間、雪掻きして、洗濯して料理して、家族としゃべって、笑って喧嘩して、テレビを観て本を読み、ごくごく普通に過ごした。多分そんな風に過ごすのだろうと、想像できた。それでいい。それがいい。
だいたいこの本は、ケラケラ笑って、じーんとして、純平ってほんと、いいやつだよなぁ。西尾のじいさん、いいキャラしてる。あー面白かった! と、本を閉じるべき、正真正銘のエンターテイメント小説なのである。
雪かきをしつつも、純平の真っ新な心を思ってしまう小気味いい本だった。

雪に閉じ込められて2日目。轍の上を踏んでも、腰までズボッ!
雪かきもしましたが、読書日和でもありました。

トラツグミは、薪のなかの虫を探しにやって来ました。

純平、いい顔してるなぁ。「盃を交わそう」と、純平。
「ウイスキーでなんやけど、こういうのは形やあらへん」と、シンヤ。

奥田小説のなかで、特に好きなのは『マドンナ』と『ガール』です。
『ガール』は、香里奈主演で、映画化されました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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