はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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人の弱さを、あらためて読む

宮部みゆき『ペテロの葬列』(集英社)を読み終えた。文句なく面白かった。
『彼か』『名もなき毒』に続く、杉村三郎シリーズ3作目。宮部小説のなかでも、大好きなシリーズの最新作とあって、本屋で手に取るなり、真っ直ぐレジに向かってしまった。
ミステリーとしても面白いが、主人公、杉村三郎と、妻、菜穂子、小学生の娘、桃子の家庭の様子が微笑ましく、杉村さんちのファンなのである。

1作目、2作目もそうだったが、今回も杉村三郎は事件に巻き込まれた。乗っていたバスが乗っ取られたのだ。犯人は拳銃を持った老人だった。3時間で終焉したバスジャックだったが、杉村は人質になった7人と共に、老人の本当の意図を調べていく。そこには、被害者が加害者となり次々に被害者を生んでいくネズミ講の、人を騙すことの暴力性が深く底のない闇となり見えてきた。

杉村は、書斎で画集を開き『聖ペテロの否認』のなかに、嘘をつき影に沈んだペテロの心中に胸を傷めつつも、思うのだ。
「嘘が人の心を損なうのは、遅かれ早かれいつかは終わるからだ。嘘は永遠ではない。人はそれほど強くなれない。できれば正しく生きたい、善く生きたいと思う人間であれば、どれほどのっぴきならない理由でついた嘘であっても、その重荷に堪えきれなくなって、いつかは真実を語ることになる」

読み終えて感じたのは、人の弱さだった。弱いから、嘘をつき、嘘をついたらまた、その嘘をつき通すために嘘をつく。ひとつの嘘をつき通すためには、約30の嘘をつかなければならないという言葉を思い出した。それは如何にも、ネズミ講の図式と似ている。そしてもう一つ、切に願った。続きを早く、シリーズ4作目を早く読みたいと、焦りにも似た気持ちでひとりごちた。
「杉村三郎、がんばれ!」
  
帯の『「悪」は伝染する。』と真っ赤な表紙が、印象的です。

カバーを開けてみると、なかは黒に白い線画。『葬列』のイメージ。

最初のページには、レンブラントの描いた『聖ペテロの否認』があります。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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