はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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藤沢周平に、作戦を練る

「おっ、生きてた」
息子からのバースディメールに、ついこぼした言葉である。
もう3年ほど帰ってこないが、母親の誕生日は覚えていたらしい。ちょっとひらめいて、メールを返した。
「ありがとう。最近読んだ本で、オススメある?」
相変わらず、本の虫なのだろうとは思ったが、人間変わっていくものだし、まだ26歳だ。しかし返信はすぐに来た。
『用心棒日月抄』
絵文字も、そっけもないメールだったが、調べてみる。『用心棒日月抄』(新潮文庫)は、藤沢周平の時代物連作短編集だった。

時代物は守備範囲ではないが、とりあえず文庫で買って読み始めた。
時代小説に慣れていないせいで慣れるまで四苦八苦したが、今では本を閉じるのが惜しいくらいに面白く読んでいる。

不意に考える。娘達とは、同じ本を読み、時には同じ音楽を聴き、同じ映画を観て、ああだこうだとくだらないことばかり喋ってきた。わたしには「本の感想は聴かない」という子育てポリシーがあった。何故なら、読んだ本の感想をいちいち聞かれていたら、オチオチ本も読めないからだ。読後の余韻に浸っている時間は、大人だろうと子どもだろうと、そっとしておいてほしいはず。だからこそ、ある程度時間が経ってから、主人公は和菓子党だとか、脇役の皮肉な性格がそこはかとなく好きだとか、テレビドラマやバラエティなどを一緒に楽しむように喋ってきた。
だが、息子は寡黙だった。うん、とか、ああ、しか言わず、大学入学と同時に出て行ったきり、東京に移り住み、その後、笑って喋った記憶はない。

読み終えたら、彼を訪ねてみよう。いや、今までもランチに誘ったことはあるのだが、ことごとくフラれている。何か作戦が必要だ。どうせ『用心棒日月抄』読んだよと言ったとしても、そう、とか、もう忘れた、と返ってくるのは目に見えているのだから。読み始めると、主人公で用心棒、青江又八郎は、息子とおなじく26歳だった。

新潮社のマークは葡萄。息子が幼い頃探していた葡萄のマークでした。
文庫の裏表紙には「江戸時代の庶民の哀歌を映しながら、同時代人から見た『忠臣蔵』の実相を鮮やかに捉えた」と、あります。

「山梨陸の孤島に!」の報道後も音沙汰がないので、息子にメールしました。
「雪、だいじょうぶ?」「だいじょうぶ。」反対だろ!? 気づけよ!
あ、失礼しました。つい、感情的に・・・。

八ヶ岳は雪深く、彼の如く寡黙です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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