はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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孤独の手のひらに、包まれた時には

江國香織の小説で一番好きなのは、何といっても『ぼくの小鳥ちゃん』だが、初期の短編集『つめたいよるに』(新潮文庫)は、格別に好きで、不意に手に取って、当てもなくページをめくりたくなる。
そのなかでも『ねぎを刻む』は、またしても格別に魅かれるものがあり、手に取るとつい読んでしまう短編だ。その小説はこんな風にして始まる。

「孤独がおしよせるのは、街灯がまるくあかりをおとす夜のホームに降りた瞬間だったりする。0.1秒だか0.01秒だか、ともかくホームに片足がついたそのせつな、何かの気配がよぎり、私は、あっ、と思う。あっ、と思った時にはすでに遅く、私は孤独の手のひらにすっぽりと包まれているのだ」

孤独の手のひらに瞬時に包まれ、ハッとする瞬間は誰しもにあることで、それは、恋人がいても夫がいても、両親がいる温かい食卓があっても、子ども達の笑い声が響いていても、時間をいとわず長電話してくれる友人がいても、解消されるものではない。

「誰にも、天地神明にかけて誰にも、他人の孤独は救えない」
主人公の私は、確信を持っている。そして、そんな夜には、ねぎを刻むのだ。

淋しいなと、ふとつぶやいてしまうような、薄暗くぬるい沼のような孤独を感じつつ過ごすことにも、歳と共に慣れてきた。誰しもにあることなのだと、たぶん、昔よりは判っているということなのか。

しんとした心持ちで、葱を、たくさん刻みました。

茗荷とオクラも、刻みました。生姜は針生姜に。

ひとりランチのフカヒレスープ卵とじ雑炊が、超豪華に!
ちなみに、末娘に聞いたところ『ひとりランチ』を若者言葉で、
『ボッチめし』と言うそうな。ひとりぼっちのご飯だから?
「でも悲惨な雰囲気漂うから、仲間うちでは『ソロランチ』って言ってた」
若者達も、言葉に工夫もしているんだな。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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