はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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家族の絆を描いた『卵の緒』

久しぶりに、瀬尾まいこの『卵の緒』(マガジンハウス)を読んだ。
彼女のデビュー作にして、「坊ちゃん文学賞大賞」受賞作である。短い小説なので、もう1編とセットで1冊になっている。
初めて瀬尾まいこを読んだ時には、驚いた。発想の突飛さが、そこ此処に見え隠れしていて、小さな驚き満載なのだ。面白くない訳がない。

例えば、冒頭文。
「僕は捨て子だ。子どもはみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ」
主人公で9歳の小学4年生、育生の語りで物語は進む。

育生がへその緒を見せてと頼むと、母さんが出して来たのは卵の殻だった。
「母さん、育生は卵で産んだの。だから、へその緒じゃなくて、卵の殻を置いているの」母さんは、けろりとした顔で言う。いぶかる育生に更に言う。
「育生。世は二十一世紀よ。人間が月へ飛んでいくのよ。ロボットが工場で働くのよ。コンピューターでなんでもできるこの世の中。卵で子どもを産むくらいなんでもないわよ」

発想の突飛さにまず魅かれ、そして血の繋がらない育生を育てる「母さん」の大らかさに、母であるわたしはますます魅かれた。

本との出会いは、人との出会いと似ている。本屋の店頭で「一目惚れ」したり、何度も手に取っては戻し「馴染みの顔」になっていったり、気になってはいるのに手を伸ばせない「遠慮がちな仲」だったり、それを乗り越えたら「意気投合」しちゃったり。
瀬尾まいこには、間違いなく「一目惚れ」だった。偶然にも同じ日に、中学生だった上の娘が学校で司書さんに薦められて借りて来ていたというエピソード付き。ふたりの娘達と、貸し借りして、ほぼすべての作品を読んでいる。強い繋がりを感じる作家だ。

親と子は、そういう出会いにはくくれないものがあるけれど、そう言えば、と考えた。わたしにも、血の繋がらない家族がいる。夫とその両親だ。そう考えてみれば、出会いの不思議と、その大きさに息を飲む。
『卵の緒』家族の絆を描いた、魅力あふれる小説である。

『図書館の神様』(マガジンハウス)が2作目です。
ある事件を機に故郷を離れ、中学で国語の講師をする女性の物語。

この間、神戸にある夫の実家に帰った時に、
義母のマグカップが欠けているのを見て、探していました。
カラフルで安定感があるマグを見つけて、ようやく送りました。
義母から、すぐに喜びのメールが。気に入ってもらってうれしいな。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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