はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『誰かが足りない』

「あ、シンクロ、してる?」
以下の文章を読んだ時に、真っ先にそう思った。昨日ブログにかいたこと、それは一昨日聞いた話でもある。

しあわせな記憶がこの人を支える。思い出せるしあわせだけではない。思い出せない無数の記憶によっても人は成り立っているみたいだ。しあわせだったり、そうでなかったり、うれしい思い出も、悲しい欠片も。
美しい記憶がそのままその人の美しさを支えるわけではないように、悲しい記憶が人のやさしさを支えることがあるように、いいことも、悪いことも、いったん人の中に深く沈んで、あるとき思いもかけない形で発露する。

宮下奈都の連作短編集『誰かが足りない』(双葉文庫)のなかにでてきた、小説の一部。ブログをかいたあとに衝動買いした文庫本だ。
しかし、こういうことは、ままある。テレビを観ながらしゃべっていて、突然ドラマの登場人物と同じ言葉をハモってしまった経験はないだろうか。
ただ、そういう時にふと、思うのだ。
「何かが作用しているのか? これは、メッセージなのか? 宗教は持たないけれど、神様っているのかも。何処かで、笑って観ているのか?」
などなど。その答えが、出たためしはないけれど。

小説のキーになるのは「ハライ」という名のレストラン。初めて扉をくぐった人にも懐かしく感じられ、一度料理を食べたら生涯その味は、忘れられない。特別な時に、特別な人と、食事を共にしなくてはいられなくなる場所だ。
この物語は、秋も終わりの夜、そこに偶然居合わせる6組の客達の、その時に至るまでのドラマを描いた6編の短編集である。

『予約1』会社が倒産し田舎に帰ることもできずコンビニで働く若者は、副業で偽のパワーストーンを売るうちに、自分自身が偽物のような気がしてくる。
『予約2』夫が死んだことを何度も忘れてしまう認知症の老女は、料理をするうちに、昔夫から聞いた「ハライ」のことを思い出す。
『予約3』係長になり仕事とストレスが増えるだけの生活に疲弊する女性は、これまで幼馴染みの男の子を、理解しようとしなかった自分に気づく。
『予約4』母親が急死してから、部屋に引きこもるようになった男子高校生は、ビデオを回すことでしか、外界を見られなくなってしまう。
『予約5』忙し過ぎるブッフェレストランで、硬くなったオムレツを温め直す日々に、頭痛や腹痛を起こしながら働くコック見習いは、ひとりとても美味しそうに食事する女性を見て、ハッとする。
『予約6』他人の失敗を知る嗅覚を持った女性は、古書市で、匂いを感じた知らない男性に声をかける。失踪した叔父のことが頭から離れなかったからだ。

夫の出張中、ひとりで食事をしていると、確かに思う。
「誰かが、足りないなぁ」食卓とは、そういう場所なのかもしれない。
この小説は、そんなわたしへの本の神様からの贈り物だったのだろうか。

末娘が二十歳になったので、お好み焼き屋へ飲みに行きました。
でも、おしゃべりに夢中で、写真を撮るのを忘れてしまいました。
これは、ひとり二次会の様子です。淋しくはないんだけど、
やっぱ『誰かが足りない』?

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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