はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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青い尻尾のブルース・ジュニア

真夏日の昼間、郵便を取りに行くと、びっきーはよく眠っていた。
しかし彼がいつでも飲めるようにと置いてある水の中に、昼寝をしていない動くものがいた。まだ幼いトカゲだ。半身浴よろしく身体の下半分を水につけ、青い尻尾を揺らし、見るからに気持ちよさげだ。
「いい湯だなって、感じですか。(もちろん水だけど)」
わたしは、すぐに逃げるだろうと思いつつも、ケータイをカメラモードにし、シャッターを切った。
すると彼(?)は慌てた。するりと水桶から脱出するものとばかり思ったが、何枚か写真を撮るうちに出られないのだと判る。プラスチックの水桶を、登っては滑り、また登っては滑る。
「出られないのかぁ。いつ入ったんだよ?」
娘に聞くと、朝散歩に行った時にはいなかったと言う。
命綱になるかと草を垂らしたが、慌てていて逃げ惑うばかりだ。あまり触らない方が彼のためかと思ったが手で外に出した。すると慌てふためいている彼はわたしの手を登り肩まで行く。
「おいおい。何処まで行くんだよ」そっと地面に降ろした。
降ろしながら考える。自分の身長の2倍もある高さの桶にいて、這い上がろうと頑張っても出られないとしたら? 自分だったらどうするだろうか。
生きていれば、たとえ極々普通に生きていようとも、そんな古井戸のような深い穴に落ち、這い上がろうともがくことだってあるのだ。

14年ほど前に住んでいた川崎で、ヤモリをよく見かけた。そのなかの喉が赤いやつに、夫は名前を付けた。
「ロバート・レッドフォード」(赤いから)
それを真似て、わたしもチビトカゲに命名した。
「ブルース・ジュニア」(青いから)
映画『ダイ・ハード』以来、ブルース・ウィリスのファンなのだ。
「タフに、生きろよ!」
尻尾を揺らして石の影に消えたブルース・ジュニアに、小さく声をかけた。
  
身体半分、水につけて気持ちよさそう。 と思ったら、ツルン!
  
人間だぁ! 恐いよ! 恐いよ!    逃げようとしたけどまた、ツルン!
  
やっと外に出られた。     助かったぁ。暗いところはホッとするなぁ。
『ニホントカゲ』は、幼少期だけ尻尾が綺麗な青をしているそうです。
 美しい尻尾を切らずに、成長してほしいですね。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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