はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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犬とセーター

「いい知らせと悪い知らせがある」とは伊坂幸太郎『マリアビートル』に登場する殺し屋の口癖だがそれとは全く関係なく、いいことと悪いことがあった。

まず悪いこと。セーヌ川南の左岸、サン・ジェルマン・デプレを歩いてた時だった。驚いて息を呑み、立ち止まった。歩道沿いの建物の一階の窓、大きな犬がじっとこちらを見ていたのだ。動かないのでぬいぐるみかと思ったのだが、本物の犬だった。
「びっくりした!」
笑いながら夫に言うと、夫も笑ってカメラを向けた。その瞬間だった。
「冷たい!」
空から、水が降って来たのだ。髪も服も濡れてしまった。夫は少し離れていたのでぶじだった。どうやら上階の人が窓から水を捨てたようだ。ベランダの植木に水をあげたのかも知れない。
「ひどい・・・」半泣きである。
「もう、パリ嫌い」ぶつぶついうわたしを、夫がなだめる。
「歩き煙草の人は無神経で危険だし、道を譲ってもメルスィも言わないし」
わたしのぶつぶつは続く。海外旅行でのカルチャーショックは何処に行ってもあるものだが、まさか頭から水をかけられるとは思いもよらなかったのだ。

だがもちろん、いいこともあった。
「あ、素敵な本屋さん」「うわ、高級お惣菜屋さん」「雑貨屋さん!」
歩く道々、面白そうな店が並び、それが個性的。値段が高くて、ウインドウショッピングしかできないことも多いが、楽しい。夫がカメラを構えるたびにわたしも立ち止まり、わたしが面白そうな店を見つけるたびに、夫も立ち止まるから、のんびり歩いていたのだ。
そんな散歩道で水をかけられてすぐに、素敵なセーター屋を見つけた。
「あ、いいかも」
カメラを構えて立ち止まった夫に、この店にいるからと言い置き、セーターを手に取って見てみた。やわらかく軽く、シンプルなデザイン。そして何よりリーズナブルな値段だ。パリで服を買うつもりはなかったが、この値段なら日本で新しいセーターを買うのと変わらない。
「スィル・ブ・プレ」
レジに持って行くと、隣りでセーターを見ていた女性に声をかけられた。
「とっても、似合います」
日本語だ。彼女はオーストラリアから来ていて、お嬢さんが京都に住んでいるのだと話してくれた。
気に入ったセーターを褒められたこと。日本語で、笑顔でフレンドリーに話しかけられたこと。濡れた服をすぐに着替えられたこと。このところの冷たい空気にぴったりの温かいセーターだったこと。そして、パリの街のブティックでセーターを買えたこと。そのどれもが嬉しかった。そう思えば、頭から水をかけられたのも、悪くなかったかな。いや、もう二度とごめんだが。
  
夫が撮ったぬいぐるみ犬とセーター。あせたブルーが気に入っています。

サン・ジェルマン・デプレの有名カフェ『レ・ドゥ・マゴ』

絵本屋さんです。通りの向かい側の建物が写真に写りこんでいます。

可愛い看板は、お肉屋さんでした。

お肉屋さんの店先では、チキンがローストされるいい匂いが!

ランチは、もと魚屋さんだったというカフェで、サバ定食。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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