はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ライフ・イズ・ファン!

コルドバは、グラナダよりもさらに田舎だった。街の一部が生活圏も含め、世界遺産になっていることもあり、静かだが観光客がやたら多い。
だがシエスタ(昼休み)の時間に店が閉まるのは、バルセロナやグラナダより徹底していて、いきなりランチを食べそこなった。
「肉食いたくない?」「生野菜もね」
スペイン名物『ハモン・セラーノ』(生ハム)やシーフード、オリーブやマリネばかりの日々にそんな会話がこぼれ、これもまた夫の友人紹介の、炭火焼の肉が美味しいというリストランテ『エル・チュラスコ』に行くことにした。

そこのサーバント氏(給仕する人)がコメディアン顔負けの面白さだった。他のテーブルに料理を運ぶ姿に、まず笑わされた。ねじまき人形のように歩くのだ。「見て見て。彼、なんだか面白いよ」「不思議なやつだね」
夫とくすくす笑いながら待っているとワインを持ってテーブルにやって来た。
だが、ワインの銘柄を夫に見せ、コルクを抜き、テイスティングに少しだけ注ぐ姿のカッコよさに見惚れた。プロなのだと判る。しかし、
「グッド・セレクト」夫がワインを褒めると、
「アイ・ノウ  アイ・ノウ」とすました顔で返す。
ねじまき人形のようにカチカチと音が鳴るかのような歩き方で料理を持って来て、下げる時には、これまたすました顔で皿を投げる真似をする。
「わっ」「びっくりした!」とふたり笑った。
「ケ・リコ!(美味しい!)」わたしがスペイン語で言っても、彼はクールな顔で言う。「アイ・ノウ  アイ・ノウ」
シェアする料理を取り分けてくれる時などは、その手際の良さにまた驚き見惚れた。料理も美味しく、何より楽しく話もはずみ、特別な時間を過ごさせてもらった。夫が英語で伝えると、彼はクールに言った。
「ライフ・イズ・ファン」

「ほんとに、人生楽しまなくちゃね」と、帰り道にしみじみと夫。
毎日の小さな時間。ひとときひととき。いつもと変わらないありふれた時間でも、楽しもうとする気持ちがあれば楽しめるんだよ。彼に教わった気がした。
さて。最後にわたしは、彼を笑わせることができた。覚えたてのスペイン語で「メ・ア・エントゥシアスマード!(とても楽しかったです!)」と言うと、たぶんたどたどしいスペイン語が微笑ましく映ったのだろう。サーバント氏は驚きの表情で笑顔を見せてくれたのだ。

ボリュームたっぷり、柔らかくジューシーなTボーンステーキ。
     
リストランテ『エル・チュラスコ』   世界遺産『メスキータ』の塔。
     
のんびり散歩したコルドバの街並み。   こんな可笑しな看板の店も。
photo by my husband

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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