はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ふと思い出す小説

何かのきっかけで、小説のワンシーンを、ふと思い出すことがある。
例えば雪が積もれば、朝倉かすみの『田村はまだか』(光文社文庫)札幌ススキノでスナックをやっているマスターの耳たぶを触る癖を思い出し、衣替えで半袖になった中学生を見れば、山本文緒の『絶対泣かない』(角川文庫)に収められた短編『今年はじめての半袖』のラストシーンで、主人公が震えながら半袖から出たひじをさするシーンを思い出す。

そんな風にして、村上春樹の『カンガルー日和』(講談社文庫)のなかの短編『鏡』を思い出した。
百物語的に、みんなで不可思議な体験談や本当にあった恐い話をしているという設定で、主人公の僕は、その家の主。最後に「鏡」の話をする。

「煙草を3回くらいふかしたあとで、急に奇妙なことに気づいた。つまり、鏡の中の僕は僕じゃないんだ。いや、外見はすっかり僕なんだよ。それは間違いないんだ。でも、それは絶対に僕じゃないんだ」

よくある話なのに、鏡を見てふと思い出すのはそのシーン。自分じゃない自分が鏡に映っている。そしてもうひとりの自分は自分をひどく憎んでいるのだ。

思い出したのは、洗面所の鏡に映った自分の顔が、ずいぶんと疲れて見えたからだ。いけない、いけないと、ゆったりと風呂につかり、久しぶりにパックした。鏡のなかのわたしの憎しみ、少しは解消されたかな。
  
猫は、トイレの壁に。トカゲは、玄関。京都の藍染めの暖簾が映っています。
いや、映っているのは、本当に藍染めの暖簾なのか? ふっふっふっ。

久々に読んだ『カンガルー日和』面白かった!
『タクシーに乗った吸血鬼』のイントロ部分の比喩に、春樹節を感じました。
「他人とうまくやっていくというのはむずかしい。玄関マットか何かになって一生寝転んで暮らせたらどんなに素敵だろうと時々考える」

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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