はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『七つの会議』

誰かに感謝する気持ちは、力になる。

読み終えたばかりの池井戸潤の小説『七つの会議』(日本経済新聞出版社)に、そんな意味合いの言葉が出てきた。
小説は、中堅の電機メーカー東京建電で起こった不祥事を、立場の違う様々な社員達の目線から描いた群像劇。会議中に居眠りばかりしている万年係長を厳しく注意したやり手の営業課長が、パワハラで移動になった。そこから、隠された不祥事はほころびを出していく。謎解きミステリーのように、わくわくしながら読める小説だった。
そのストーリーとは関係なく、登場人物のひとり、親会社から出向してきた副社長村西が、父を亡くしたときを回想するシーンに魅かれたのだ。まるで引力を感じるみたいに。以下本文から。

そんな村西に、跡取り息子が会社を継がなかったからだと口にする者は誰ひとりとしていなかった。村西がソニックで成功していたこともあるだろうが、生前、周囲に後継問題をきちんと説明しておいてくれた父のおかげだ。
家族をはじめ、大勢の人たちに支えられてきた。
それを実感できることが、村西の力であった。もちろん仕事でも、誰が自分を支えてくれているかをよくわかっていた。それは先輩であり後輩であり、スタッフであり、そしてなにより顧客である。

そして村西は、父の言葉を思い出すのだった。
「客を大事にせん商売は滅びる」

本を読んでいると、こうして何気ないシーンや言葉に引力を感じるときがある。それは人によって違い、そして読んでいるときの気分によっても違ってくるのだろう。それに、誰かに感謝する気持ちは力になるというところに魅かれたからといって、感謝する気持ちを持とうと思うとかそういうことじゃない。
ただ引力を感じたものを、しばらく留めておこうと思うのだ。
それはたぶん、読んだ人のなかへと沈んでいき、何かを小さく変えていく。
だから、なのかも知れない。本を読むことをやめられないのは。

夫が買って先に読んだKindle版を借りて、読みました。
日本経済新聞電子版に連載した小説。8話の短編で構成されています。
群像劇と呼ばれるだけあって、村西だけじゃなく何人かの登場人物が、
生い立ちからプライベートな悩みまで、深く描かれていました。

☆熊本の地震に、胸を傷めています。
 今日また、大きな地震があったそうですが、
 どうかこれ以上、被害が大きくなりませんように。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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