はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『嫌な女』

桂望実『嫌な女』(光文社文庫)を、読んだ。
女優、黒木瞳が自ら望み、初監督をする映画の原作小説である。
主人公は石田徹子、弁護士。遠縁の親戚で同い年の小谷夏子が、ある日トラブルに巻き込まれたと頼ってきた。しかしトラブルメーカーはその夏子自身だった。彼女は、男をその気にさせる天才。生まれながらの詐欺師だったのだ。
以下本文から。

いいかい、よーくお聞きよ。この世には、生来の詐欺師ってのがいるんだよ。それが夏っちゃんだ。詐欺師なんて、嫌われもんだと思うだろ。違うんだ。愛されるんだよ、詐欺師ってのは。人から愛される特技のあるもんじゃなきゃ、人なんて騙せない。カウンターにさ、男と並んで座るんだ。でさ、なにを話してんのかと思うとさ、宝くじで百万円当たったら、どうするって男に聞いてんだよ。その男が、成田空港から海外旅行に行きたいと言ったとするだろ。そうしたら、行き先はどうするか、いつがいいかって、どんどん夢を膨らませるんだ。楽しそうにね。実際は宝くじなんて当たりゃしないし、買ってもいないのかもしれないよ。だけどさ、そんなんで、二時間も楽しい時間を過ごすんだ。帰りにさ、来月の家賃、払えなくって、なんて言ってごらんよ。男は黙って手持ちの金を出すだろ。次の日には、別の男とカウンターに並んでる。そんで、言うんだよ。宝くじで百万円が当たったら、どうするって。

徹子は、夏子に振り回されつつも、いつしか彼女に深く興味を抱いていることに気づく。夏子は人をだますが、相手に与えるのもあるのだ。人づきあいが苦手で孤独を感じ続けた徹子もまた、夏子の存在に影響された一人だった。
「宝くじで百万円」と、もう一つ、夏子ならではのネタがあった。「人生で楽しかったランキングベストテン」だ。十個もないよと言う老人に、夏子は怒って言うのだった。「絶対ある」と。
8つの短編で構成された連作小説は、徹子が弁護士になりたての24歳から始まり、29歳、36歳、40歳、47歳、56歳、65歳、71歳まで、順を追って紡がれていく。徹子と夏子、ふたりの人生の物語でもある。

NHKでドラマ化されたキャストは、徹子が黒木瞳、夏子が鈴木保奈美。
映画版では、徹子を吉田羊、夏子を木村佳乃が演じます。
6月25日公開だそうです。主題歌は竹内まりや『いのちの歌』
一度聴いたら、耳に、そして胸に残るメロディです。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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