はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『サクリファイス』

近藤史恵『サクリファイス』(新潮文庫)を、読んだ。プロの自転車競技、ロードレースの物語。と言っても、スポ根とは色合いが違う。サスペンスとして楽しめる、ミステリー上手な近藤史恵ならではの小説だ。

「青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた」とうたわれるこの小説は、近藤史恵の代表作と言える。近藤史恵の小説は、すでに十冊以上読んでいる。どの本を読んでも楽しめること受け合いと熱く信頼している作家の一人である。その代表作をここまで避けてきたのは、やはりスポ根モノへの偏見としか言えないだろう。個人的にただ「根性」という言葉が苦手なだけなのだが。でもねこれ、スポ根じゃない。だってわたしが大好きになった小説なんだから。

主人公、白石誓(しらいしちかう)通称チカは、チーム・オッジに所属している23歳の新人ロードレーサー。サイクルロードレースは、個人競技のように見えてじつは、団体競技の要素が強い。表彰台に上るには一人だが、チーム全体でそれを支えていく競技なのだ。チカはロードレースのそんなところに魅かれ、陸上から転身した。勝利のためにエースに尽くす。アシストとして走ることが本当に好きだったのだ。だが、チームメイトがみな同じ考えだとは限らない。いや、自分がトップに立ちたいと思う方が自然なのかも知れない。
ある日、チームのエース石尾が昔、期待された新人を故意の事故で再起不能にしたという話を聞かされる。石尾の勝利を願い走るチカだが心は揺れていく。
そんななか、ベルギー遠征で大きな事故が起こった。
「非情にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、俺たちは走っているんだ」石尾のその言葉に込められた決意とは。

共感する。思えばアシスト人生だ。
夫の会社を手伝って二十年と少し経つ。仕事は経理だけではない。彼のアシスト全般が、わたしの仕事だと、そう思ってやって来た。主役になるより、その方が性に合っていると知っている。だから、チカの気持ちがよく判る。
そしてチカは、エースをアシストすることに懸命になりながらも、もちろん自分のために走っている。共感するからこそ実感することだ。

『サクリファイス』とは、犠牲の意味。大藪春彦賞受賞作品。
『エデン』は続編。チカがツール・ド・フランスに挑みます。
『サヴァイヴ』は、シリーズ秘話6編を収録した短編集です。
*今、ツール・ド・フランスのゴール地点、パリを旅行中です。
 明日から、パリ徒然、発信していきます*

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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