はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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螺旋階段は、何処へ向かっていくのか

日曜、行楽日和ですよと言わんばかりの秋晴れに誘われて、夫と出かけた。
『ワイン&クラフトフェスタ』を、同じ北杜市は長坂町でやっていると、出店する鉄刻屋さんに聞いたのだ。ふたりなのでネットで調べることもせず、まあ行ってみようかとスーパーに買い物にでも行くような気軽さで出かけた。
山梨に越して来て、もう13年。何度か足を運んだ店も、いくつも出店している。余計にのんびりとした気分になり、ふらふら冷やかして歩いた。

一通りの店を見て、ランチにカレーを食べ、夫はワイン、わたしはアイス珈琲を飲み、誰かと会ってはしゃべったり、ぼんやり空を見たり、手に取ったものを買おうかと真剣に悩んだりした。
「あ、これ素敵」と思った途端、夫が言った。
「これ、いいねぇ」同じものである。
木製の一輪挿しで、作ってから川に浸しておき、流木風に仕上げたという。
小さなもので8千円。手が出ない値だが、夫は大きい方を持ち上げ、聞いた。
「これ、いくらですか?」
すると、遊び心で作ったもので値は付けていないという。要相談だそうだ。
「1万円ってことは、ないですよね?」と、探りを入れる夫。
「1万円じゃ、嫌です」と、きっぱり木工作家さん。
うーんと唸り「今度、工房にお邪魔します」と案内ハガキをもらい、すごすごとブースを出るしかなかった。

その一輪挿しは、階段をデザインしてあった。四角い木を削り、下から螺旋階段で上まで上れる。
「この階段を見ながら、酒を呑んだら美味いだろうな」と、夫。
うなずきつつ、わたしはフィッシャーのだまし絵を思い浮かべていた。何処まで上っても頂上に着かない階段だ。
いつも全力で真っ直ぐに階段を上っていく夫は、常にわたしのずいぶんと先を行っている。彼は、極度の方向音痴であるわたしと違い道に迷うことはない。これ、本当に上っているのだろうかと疑ったり、立ち止まったりはしないのだ。その彼が先に行っていることが、わたしの行く道を微かではあるが確かに照らしてくれている。そんなそれぞれの足元を、ふたり見据えつつ、階段の一輪挿しを前に酒を呑むのもいいなと、秋空を見上げ考えた。

18のブースに、個性豊かなお店が、出店してました。

ランチは、青空の下で『ぼんてんや』の盛りだくさんカレー。

『平山郁夫シルクロード美術館』の裏にある公園です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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