はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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玄関に咲いた、蓮の花

植物の持つその姿かたちは、摩訶不思議である。
その姿を、植物の持つ柔らかさ、しなやかさとは対極に在る鉄で、表現しようという人がいることも、また摩訶不思議である。
夫の友人である鉄のアーティスト『鉄刻屋』さんに、玄関のランプシェードを頼んでいた。彼の個展には夫婦で出かけたし、表札とキッチンの引き出しの取っ手36個も作ってもらい、親しくもなっていたので、ざっくばらんに相談しイメージを膨らませていった。伸びゆく葉を表現したものを見せてもらっていたこともあり、植物がいいかなとは思っていた。
だが「例えば花なら何がいいでしょう? 」と聞かれた時には考え込んだ。

考え込み、しかし30秒ほどで答えは出た。「蓮の花が、いいな」
ふと浮かんだ回答は、出来上がってみると偶然ではなく必然だったと思えた。
若い頃は黄色いスターチスが好きだった。華やか過ぎず、それでも精一杯明るく黄色に咲き、枯れてからも長く色を損なわずにドライフラワーとして飾られる。脇役で目立たない優しい花だ。スターチスを知ったきっかけは友人の恋だった。花屋の店員に恋した彼女につき合わされて、花屋に通った高校の頃。少女漫画かいなと思うような事実である。

年月が過ぎるのと共に、心のいろいろな部分が削られていく。研ぎ澄まされるという解釈もできるが、ぼろぼろ落としていくようにも感じる。その過程で好きな花もスターチスも削られていった。今わたしには、特別好きな花はない。
蓮は、末娘が好きな花だ。蓮が描かれた紅茶茶碗を彼女が持っていったので、我が家に蓮の花はなくなった。だから一つ欲しいなと、ふと思ったのである。

蓮はとても素敵に玄関に咲いた。その蓮をカメラに収め、上の娘に聞いた。
「好きな花、ある?」「ない」
即答だった。今彼女は、わたしがスターチスをまだ好きだった年齢である。
いや無論、好きな花が在っても無くてもいい。だが記憶に残るシーンに、花が添えられているというのもいい。興味を持つことも生きていく時間を豊かにしてくれる。オーストラリアで1年過ごし、日本を知りたくなった彼女は、華道のサークルに入ったばかりだ。これからの人生、彼女にたくさんの花の洗礼が降り注ぎますように。

フラッシュをたくと、実際と違って平坦な写真になってしまいますが……

暗いままで灯りを楽しむと、こういう雰囲気に。

蓮の花と、蕾の部分。試行錯誤の末、この形の蕾になったそうです。
この蓮が鉄刻屋さんにとっても、特別なワンシーンになるといいな。

まえださんちの表札。錆を活かしてのデザインです。

取っ手のデザインはわたしが。と言っても、これ↑(笑)

が、これになりました。とっても(笑)いいでしょう?

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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