はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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坂のない街

結婚してからというもの、坂のない街で暮らしたことがない。
引っ越しは3度した。最初に住んだ6畳一間のアパートも、坂の上だった。
自転車で買い物に行くも、帰りが坂道となるとあまり意味がない。マイカーなど、駐車場代だけでもバカにならない都心で持てるはずもなく、不便極まりない生活を、何とも思わず受け入れていた。若かったよなぁと思う。
今住む田舎町では、車がなければ何処にも行くことができない。しかしこれまで暮らしてきた街より、遥かに便利だ。車がある。ただそれだけの違いだが、マイカーを買い、車ってこんなにも便利なんだと、途方に暮れるほど驚いたのを覚えている。地球のことを考えると、その便利さに頼り、甘えすぎるのもどうかとは思うけれど。

末娘が春から暮らしている浦和には、田舎にないものが何でもある。
コンビニやヨーカドー(末娘は『イトヨさん』と呼ぶ)だけではなく、パルコも伊勢丹もある。シネコンも県立図書館もある。居酒屋も銀行もたくさんあるし、当然のようにスタバもある。なにしろ駅がある。西口駅前には、浦和レッズのメンバーの手形や足形、サインがある。小野伸二の足形だってある。
商店街もある。彼女は越して来た時に、コロッケを揚げて売っている肉屋が、物語世界のなか以外で実在することを確認し、感動していた。
あるあるだらけ。それなのに、坂はない。もうこれは便利すぎるぞと、実在する街なのか疑わしくなるほどの便利さだ。

だが今はもう、便利とか不便とかを越え、長い坂道を、のぼってそして、くだって。そうして歩いた生活がただ懐かしい。風情と言おうか、坂のある街が持つ味わいは、わたしのなかに、しっかりと息づいていて、わたしという人間の一部を形成しているようにさえ思える。

坂のない街で、彼女がつつましく暮らしている様子も、垣間見えた。
「最近、卵、食べてないんだよねぇ」と、娘。「なんで?」と、わたし。
「だって、イトヨさんで、安売りしないんだもん」
「卵って200円くらいでしょ? 安売りじゃなくても」
「安売りだと、98円なんだよ。その違いは大きい!」
ふたりゆっくりランチした後、イトヨさんで、198円の卵を買った。末娘はピンクのエコバッグを、ちゃんと持参していた。

末娘が、いつも前を通るだけで入ったことがないというイタリアンで。
ピザは、窯で焼いていました。ハロウィン一色のにぎやかな店内。

ピッツァ・マルゲリータは、フレッシュトマトでジューシーでした。

雑貨屋さんも、探さなくてもたくさんあります。

小野伸二の足形とサイン。伊勢丹前の歩道です。
「こないだ、ヴァンフォーレがレッズに、ロスタイムで追いついてさ」
「しぃっ!」と、娘。「非県民だって、白い目で見られるよ!」

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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