はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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夜の闇に呼ばれる時

「今夜は、闇が濃いね」「今夜は、けっこう痛むんだ? 眠れないんだね」
「うん。このところよかったんだけど、波があるみたいだ」
「眠れない時ってさ、夜の闇に呼ばれるって言うか、物事、悪い方へ悪い方へ考えちゃうよね」
「全く、その通りだよ。嫌なことばかりが、膨らんで大きくなっていく」
「そんな時にはね、小さな事実を思い浮かべるといいんだって」
「小さな事実?」「うん。実際に起こった、嘘のないほんの小さな出来事」
「羊じゃなく?」「そう。たとえば今日、前を走っている車のブレーキランプが切れてたよね? 教えてあげたいってじれったくなるじゃない、あれ」
「なるねぇ。教えてあげたいのは山々だけど、伝えられないもどかしさ」
「それで、自分はだいじょうぶかなと思っても、それがまた見えないんだよ」
「そうそう。車の姿見とかあるといいよね。美容室で、後ろ姿を確認するみたいにできるとさ」
「それは、大きく出たな、右手くん」「大きいかな? 左手くん」
「もっと小さくいこうよ。たとえば、こないだ電車でしゃっくりしてた女の子がいたじゃん。ワァッてびっくりさせてあげたい衝動に、駆られるよね」
「あれね。けっこう我慢するのたいへんかも。でもさ、電車中の人がいっぺんにワアッて驚かせたら、電車がびっくりして停まりそうだね」
「右手くん、また話が大きくなった」「ごめん。小さくだったね、左手くん」

frozen shoulder(五十肩)になった右手くんが痛まずとも、訳もなく眠れない時もある。子ども達が幼い頃「お母さん、眠れない」と甘えてくることがよくあった。「楽しいことを考えなさい」とか言ったように記憶しているが、今、自分がそう言われても「楽しいこと?」と悩んでしまう。返って眠れなくなりそうだ。それなら、左手くんの言うように、小さな事実を羊を数えるが如く、数えてみるのもいいかもしれない。事実は事実であり、闇に呼ばれ悪い方へと、大きく膨らんでいくこともない。真実の行方を追うこともない。

先週、真夜中に、地震で目覚めると、上の娘が寝室にやって来た。
「地震だね」と、声をかけると「恐い。恐い。恐い」と震えている。
山梨は震度2くらい。東北はどうだろうと心配にはなったが、娘の恐がり方が普通ではなかったので聞くと、
「明日の学祭で『お化け屋敷』やるんだけど、そのメイクとかさっきまで印刷してたら、地震まであって恐くなっちゃった。眠れないー」
自分で企画した『お化け屋敷』で、自分で考えたメイクを友達に教えて印刷し、夜中に恐がっている彼女に、思わず笑ってしまった。笑って「一緒に寝る?」と誘ったがさすがに23歳ともなると誘いにはノッてこなかった。
「楽しいことを考えなさい」とも、わたしも、もう言わず、すごすごと部屋に戻る娘の背中を見守りつつ、くつくつといつまでも笑っていた。

夫のベトナム出張土産は珈琲でした。7粒で1グラム。小さく軽い事実です。

見るからに深煎り珈琲だと思い、アメリカンに淹れました。
夜の闇の濃さも、アメリカンに出来たら、楽しめるかも。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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