はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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シールドを突破して

ずっと行きたいと思っていたのに、足を踏み入れることのできない場所があった。同じ明野町内のカフェ『くじらぐも』だ。
友人とも夫とも話題にはなるが、行こうという話にはならない。ランチしやすい水・木が定休だということもあるが、他には理由などない。では、ひとりランチでとも思うのだが、何故か気が進まない。車でよく前は通るのだ。町から国道に出る3つの道の一つ。その裏道に面した場所にある。だがまるで、シールドで遮断されているかのように、敷地内に入れないのである。

「じゃあ、一緒に行こうよ」上の娘が言いだした。
彼女は最近「健康」にハマっていて、地元の野菜を使った煮物やサラダや玄米などをランチに出す『くじらぐも』には、すでに行ったことがあると言う。
「つ、連れてってください」と、わたし。
駐車場に車を停め、台風一過の空の下、歩く。
井戸がある。小学校にあるような遊具、太鼓橋がある。竹で作った丸いスペースがある。大きな釡や南瓜が置かれた物置のような場所がある。広い囲いのなかには山羊が草を食んでいる。苺畑やハーブがある。店の入口まで敷き詰めた石の道には、雑草が覆いかぶさっている。その太鼓橋も、『くじらぐも』とかかれた看板も、何十年も前からここにあるかのようにペンキが落ちている。ゆっくり歩きながら心のなかでつぶやく。「シールド突破!」

店内に入った時には、わたしのなかにあったシールドはすっかり解除されていた。骨董品とも言える足踏みミシン、ブリキの扇風機、持って帰りたいくらい素敵な珈琲ミル、天井には裸電球。ついたてを利用した手作りの棚。何度も足を運んだ店のようにくつろぎ、娘と他愛なくしゃべり美味しくご飯を食べた。

シールドを突破して判ったのは、店に入るまでのすべてが、土地に馴染みすぎているということだった。古いもの好きにはたまらなくお洒落な店内は、普段着のこの町とは確かに違っている。けれど、そこにたどり着くまでの短い通路や庭が、田舎町を凝縮した空気を見事に再現していて、わたしにとっては、それが分厚いシールドとなったのだ。
「明野の人は、あんまり来ないんだって」と、娘。
東京からわざわざ足を運ぶ人も多いという明野の観光スポットに、シールド突破を楽しむ派の娘のお陰で、ようやくたどり着けた。

井戸と「太鼓橋」のような遊具。

竹繭カフェ? なかでお茶して、落ち着くかなぁ?

入口には、小さすぎるほどに小さな看板と、野の花が。

野菜中心というより、ほぼ野菜のランチ。ハーブティー付き。
葡萄酵母のパンと玄米っぽいチャーハンは、娘と半分こ。
わたしのおごりなので、娘は遠慮なく、薩摩芋のチーズケーキも食べました。
  
飾ってあった、心魅かれた珈琲ミル。店内にはうさぎが1匹、
庭には3匹の山羊。山羊は、とても活発に動き回っていました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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