はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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大人の『いつか』は、来ないのか?

「大人の『いつか』は、実現しない」
末娘が、小学校高学年の頃の言葉である。
「これ、買って!」「いつか、買ってあげるね」
「ディズニーランド行きたい!」「いつか、行こうね」
その『いつか』は、永遠にやって来ない、実現しないものだと、ある時ふと、腑に落ちたと言う。
それは彼女が、限りなく大人に近づいた瞬間だったのかもしれない。
わたしとて、誤魔化そうという気持ちなどなく、まあいつかその時が来たらと軽い気持ちで答えただけだったのだと思うが、子どもの感性というものは厳しく、真っ直ぐだ。

「いつやるの?」「今でしょ」が、今年の流行語大賞候補らしいが、今じゃなくとも、嘘はなくやって来る『いつか』があることも、信じたい。

機が熟したのだと、感じる出来事があった。
ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』(新潮文庫)短編小説集の表題作を読んだ。何度目かのリベンジだ。というのも、この小説の良さが何度読んでも判らなかったのだ。自分の感性に合わないだけだろうと、いつもなら思うのだが、島本理生が「すごくいいですよねぇ」と角田光代との対談で恍惚感をにじませ言っているのを読み、わたしも『いつか』「すごくいいですよねぇ」と言いたい。ただそれだけで、リベンジを続けてきたのだ。今、ようやく言える。
「ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』、すごくいいですよねぇ」
わたしのささやかな『いつか』はやって来た。嬉しい。

『いつか』
遠く未来を思わせる、胸のなかに空が広がっていくような言葉である。
大人になって末娘は、この言葉をどんな風に使っていくのだろうか。

PEN/ヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞、
ピューリッツァー・フィクション賞受賞の短編集です。
スタバで最近お気に入りのパッションアイスティーを、飲みながら。
停電の夜風の、写真にしてみました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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