はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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どの家にも必ずある『流しの下の骨』

その家に住む家族にしか、わからないこと。些細なことだが、我が家にもあるし、多分どんな家族にもあるものだろう。
江國香織は小説『流しの下の骨』(新潮文庫)で「流しの下に骨がある」との比喩を使い表現している。台所の流しの下に骨が置いてあることは、その家の者しか知らない。つまり外から見ても判らないことが、家族にはあるのだと。

我が家の流しの下には、もちろん骨はない。骨どころか、変わったものも何もないと思う。ごく普通の家庭だと思っている。いくつか挙げるとしても、小さなことばかりだ。

たとえば、上の娘はオーストラリアのシェアハウスで、歯磨きについてよく驚かれたという。我が家ではみな10分くらいは磨くので、洗面所を出て好きなところで磨くのだ。テレビを観ながら、パソコンを開きながら、新聞を読みながら、ベッドに寝転びながら、庭でイタリアンパセリを眺めながら、という具合いだ。よその家の人がみな洗面所で歯磨きをするのかわたしは知らない。

またたとえば「9時45分予約ね」と夫が言う。それだけで意味が分かるのは家族だけである。夏に帰省した末娘はこれを聞き「なつかしい!」と言ったものだが、これは夫が夜サッカーの練習後帰宅してすぐに風呂に入りたい、なので娘達とバッティングしないように先に入っておいてねという意味なのだ。

またたとえば「サッカーの練習用に、ポカリ買っといて」と夫に言われ、わたしが買うのはアクエリアスである。何故か我が家では、アクエリアスの短縮形がポカリになってしまっている。
またたとえば、洗濯物のポケットに何かが入っていた場合、我が家では「ポケット大賞、おめでとうございます!」と讃えられる。
またたとえば、誰かが机に足をぶつけたとか、痛いけど笑っちゃうような時「可哀想だね」を「カワウソだね」と言う。またたとえば。またたとえば。

ごくごく普通の家族にも、その家でしか通じないルールや、知りえないこと、わからないことがある。小説『流しの下の骨』を思い出すたびに、よその家のそんな部分を覗いてみたい衝動に駆られるのだ。

「久しぶりに、今夜ユッケにしようか」と、わたし。
「いいね」と、夫。我が家のユッケは、アボカド鮪イタリアンです。
安い赤身でも卵の黄身を混ぜることで、トロっぽくなります。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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