はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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熊の胆を飲み、海老のように背中を丸めて

熱海から船に乗って、初島に来ている。
土砂降りであるが、それはいい。庭に残して来た植えたばかりのドクダミを思うと、雨を見つめる目も優しいものとなる。人の心理とは不思議なものだ。

だが、そんな心持ちと身体とは連携していない部分も多く、船酔いした。たった23分の船旅。何度か訪ねた初島行きの船で、これまで酔ったことはない。波は高く揺れも激しく外を見てもつまらないので夫のスマホをいじっていた。
「スマホなんか、いじってるから」と、夫。「スマホの、ばか」
返す言葉も、無意味で弱々しい。ホテルに着いた途端、ベッドに横になった。横を向き、海老のように背中を丸める。

「海老みたいに、背中を丸めて寝ていればだいじょうぶ」
とは、幼い頃、よく聞かされ元看護婦だった母の言葉だ。
小学生の頃、原因不明の胃痛によく悩まされた。お腹をこわしている訳ではなく、ただただ、胃が痛いのである。
そんなわたしに、母は、決まって漢方薬『熊の胆(くまのい)』を飲ませた。富山の薬屋が持ってくる胃薬で、黒く四角く匂いのきつい錠剤だ。
『熊の胆』を飲み、海老のように丸くなり、半日眠る。すると翌日にはもう、すっかり元気になっている。
中学に上がってからは、それもなくなった。いったい何だったのか今でも判らない。煎餅布団に横になり、胃は熊で、背中は海老になった自分を、静かに受け入れる時間。そういう時間が必要だったのかも知れない。ストレスだとか、学校で何かあったとか、今の時代なら原因究明をするだろう。そんな詮索もなく、ただ眠ることで回復した。いい時代だったとも言える。
価値観の違いに反発することが多く、影響を受けまいと思ってきた母。だが、大人になった今でも自分のなかに母の言葉が残っていることを感じる瞬間は少なくない。家族とは、否が応でもたがいに影響し合う存在なのだ。
25歳で母親になった時、子どもが自分などの影響を受けることに、突然恐怖を感じ、途方に暮れたことを思い出す。その途方に暮れた日々さえ、どうやって超えて来たのか思い出すこともできないほど、遠くなってしまった。

海老になり1時間眠ると、夫が風呂から上がってきた。
気分はすっかりよく、ゆったり風呂につかり、夕食には美味しくビールの飲んだのだった。めでたしめでたし。

前菜盛り合わせは、海の味、いっぱいでした ♪

刺し盛りいろいろに、生芝海老がのっていました。
「丸まってるなぁ」と思いつつ、いただきました。

あわびが効いた熱々海鮮グラタンと、さわらの西京焼き。
ちょっと日にちは過ぎたけど、夫の誕生日を祝って、乾杯!
夫は日本酒、わたしはビール。お酒も、ほろほろと進みました。

初島でもドクダミが、しっとり雨に濡れていました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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