はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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本との出会い

以前読んだ小説に、再び出会うことがある。
読み始めは気づかなくとも、何故かストーリーの流れやラストが、不意に思い浮かび、ああ、これ読んだことある、と気づく。

中田永一の短編集『百瀬、こっちを向いて。』(祥伝社文庫)に収められた『なみうちぎわ』が、そうだった。この短編の初出、おなじく祥伝社の男性作家6人による恋愛アンソロジー『LOVE or LIKE』は、読んだ記憶がある。だが、タイトルも作家名も覚えていなかったし、中田永一に注目したことは、これまでなかった。覆面作家だということも、今回初めて知った。

さて『なみうちぎわ』
海で溺れ、5年間、意識が戻らなかった姫子は、嵐の夜、目を覚ました。
一つ年上の姉は、赤ん坊を抱いていて、眠りにつく前、高校生だった姫子が、今は21歳であることを告げる。そして、見たことのない高校生男子が、すぐに駆けつけた。彼、小太郎は、姫子が家庭教師をしていた小学生だった。姫子は、彼を助けるために海に飛び込んだのだ。

印象的な設定では、ある。それだけに、逆にありがちなものに見えたのかも知れない。根っこのところで印象に残っていても、大きな興味は湧かなかったとも言える。そして、再びこうして出会った不思議にハッとさせられる。
「恋する胸の痛みを、ちょっとは思い出してみたら?」
とでも言っているような、淡く焦がれる恋心を、キュンキュン感じる短編ばかりが4編、揃っていた。

本との出会いは、人との出会いと似ている。
図書館や本屋で、いつも背表紙のみ見ていて、気になりつつ何年も手にしない本。それをふと手にとってみたら、思いもよらぬ大きな出会いに発展していった、という経験はないだろうか。
人との出会いも、また、巨大な迷路のなかで、何故か何度も出くわしてしまうような偶然と必然との繰り返しに思える。
手にとることのない多くの本。すれ違うだけのたくさんの人。考えると、出会ったものの大切さが、心に沁みてくる。

お気に入りの孔雀模様の帽子を、今年初めて使いました。
野外で読書にいい季節。のはずが、何故にこんなに暑いの?

田んぼに映った案山子は、涼しげに笑っているんだけどなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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