はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『星間商事株式会社 社史編纂室』

三浦しをん『星間商事株式会社 社史編纂室』(ちくま文庫)を読んだ。
本屋のPOPに、ついつい買ってしまったのだ。その内容は。
「恋愛あり、友情あり、一風変わった趣味もあり。おまけにミステリー要素ありのてんこ盛りお仕事小説。三浦しをんワールド全開!」
早い話が、エンターテイメント・コメディだ。
くつくつ笑いながら読みつつ、時に切なく胸を痛めた。登場人物達のキャラがまた、やたら可笑しく、なのに、みな何処か真面目で、共感さえでき、雲の上を歩いているようなふわふわ感のなかに、血の通った現実が見え隠れする。
不思議な小説だった。以下、本文から、社史編纂室、4人の様子。

「きみは腐女子なんだな、川田くん」
幸代に背広の襟を摑まれつつ、本間課長はなおも念押しした。幸代はもうヤケになって、わたしは腐女子と自称したことは一度もないんですけどねと思いながら「ええ、ええ、そうですよ」と怒鳴った。
「エロい同人誌作ってますよ。ここ十年、抽選落ちしないかぎり夏冬のコミケに参加し続けてますよ、いけないですか?」
「ふじょしって?」みっこちゃんが目をぱちくりさせ、
「朝からなんの騒ぎなんすか、課長」と矢田がソファから身を起こした。

主人公、幸代は29歳。いつふらりと旅に出てしまうか判らない彼と同棲中。高校時代からの女友達3人で同人誌(サラリーマン男同士の恋愛がテーマ)を作ってコミケに出すのが趣味。上手くいってるのか判らない恋に、夢中になって来た趣味に、微かな波紋が広がり始め、会社では、社史を調査中に秘められた過去に気づいてしまう。迷いながらもたどり着いた先に、見えたものは。

強く魅かれた、一文があった。

そうだ。紙に記されたひとの思いは、時間を越えていつか誰かに届く。燃やしつくすことも、粉砕しつくすこともできない、輝く記憶の結晶となって。

「紡がれる言葉」は「誰かの思い」なのだと、再確認した。

「えっ、先輩の彼氏さん、いまおうちにいるんですか?」
と、みっこが話に割りこんだ。幸代は優しく教え諭す。
「彼氏にさんづけするの、やめようね」「なんでですかー」
尻の座りが悪いからだよ、と内心では考えていた。
「氏」ってのがすでに敬称なのに、さらに「さん」をつけたらおかしいだろ。「川田氏さん」って言わないだろ。(社史編纂室での会話より)

月と星の国旗が、物語の鍵になります。小説では架空の国が登場しますが、
実際、月、星、太陽をモチーフにした国旗、けっこう多いんですね。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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