はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『スーツケースの半分は』

近藤史恵の連作短編集『スーツケースの半分は』(祥伝社)を、読んだ。
30歳手前の真美は、フリーマーケットで青いスーツケースに一目惚れ。そのスーツケースのなかには一枚のメモが入っていた。
「あなたの旅に、幸多かれ」
真美は、心配する夫の反対を押し切り、ひとり憧れのニューヨークへと旅に出る。そしてそのスーツケースは、友人達の手から手へ。世界中を旅するうちに「幸運のスーツケース」と呼ばれるようになっていった。
以下、第2話『三泊四日のシンデレラ』より。

「建物の内装が豪華なのはもちろんだけど、サービスが素晴らしいの。何度か泊まったら、食べ物や枕の好みとかを覚えていてくれるし、まるでお姫様みたいに扱ってくれる」
そう口に出して、自分の少女趣味に恥ずかしくなった。だが、桂木は言った。
「丁寧に扱ってもらうことって大事ですよね」
はっとした。言われてからやっと気づいた。
自分は大切に、丁寧に扱ってもらいたかったのだ。たった三泊四日でもいいから、そのときだけは誰かに、丁寧に扱われたかったのだ。それが払ったお金の対価であり、時間切れになれば覚めてしまう魔法だったとしても。
花恵ははっきりと口に出した。
「うん。わたし、大事に扱われたかったの」
つかの間、そうしてもらえれば、また頑張れる。日常に戻って戦える。
思い切って言ってみた。
「でもさそれって少しわびしいよね。お金を払って大切にしてもらうなんて」
桂木は即答した。
「そんなことないですよ。誰にも親切にされず、お金も払わず、なのに大切にしてもらえないって愚痴ばっかり言う人は、世の中にたくさんいるでしょ。そっちの方がずっとわびしいし、自分以外の人に甘えてますよ」

スーツケースは、ニューヨーク、香港、中東アブダビ、パリ、ドイツはシュットゥットガルトと途中、行方不明になりながらも旅していく。ファンタジー要素がちらりと見える小説だが、そこはミステリー上手の近藤史恵。きちんと伏線を回収しているところがまた魅力の一つとなっていた。
いちばんの魅力はと言うと、それぞれの旅、そしてその時々の旅があるのだと再確認できるところかな。同じ場所を同じ人物が旅しても、そのときの心の持ちようで旅はがらりと色を変えるものなのだと。

帯の言葉「大丈夫。一歩踏み出せば、どこへだって行ける」
「いつも、今ここが出発点」にも、魅かれました。

カバーには、世界中のスナップ写真が描かれていました。
メンフクロウ(白いフクロウ)は、小説のなかにも登場します。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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