はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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視点を左右するもの

舞台に立つ彼女はまるで、モノクロの世界から浮き上がるかのように見えた。
芝居『死神の浮力』で、香川を演じた遠藤留奈である。

先月末になるが、芝居を観に行った。伊坂原作『死神の浮力』(文芸春秋)
芝居好きな伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間に誘われ、浮き浮きと出かけた。場所は下北沢でも有名な、一度行ってはみたかった本多劇場だというから、楽しみも倍増。発売日に予約し(彼女が)最前列をゲット(もちろん彼女が)コンビニでチケットを入手し(彼女が)駅で待ち合わせて場所を確認し(彼女が)伊坂トークを繰り広げながら(もちろんふたりで)ランチした(これは、わたしの驕りで)

芝居は「ドラマライブラリー」という新しい形式のものらしく、出演者すべてが片手に台本を持ち、読む。なので動きは少ないのだが、形式のせいもあるのか、ほぼ原作そのままで違和感もなく楽しめた。死神、千葉のとぼけたキャラも、いい感じで伝わってきた。
千葉はキャラが濃いので、演技云々は、よく判らなかったが、脇を固める役者の演技がぴか一で、最前列だったこともあり、その迫力に圧倒された。

ストーリーは、死神が1週間人間につき、可(死)か不可(生)かを見極める。で、千葉は10歳の娘を殺された山野辺の身辺調査をしていた。その山野辺夫妻は無罪となった犯人に復讐しようと暗殺計画を立てていた。千葉は、前作『死神の精度』での設定通り晴れた空を見たことがない。彼が仕事をする時は、いつだって雨なのだ。千葉に感情があるのか判らないが、涙雨だろうか。

観終わった、わたし達ふたりが、同意見だったのは、
「香川(千葉の同僚、死神)のエンディングのお辞儀、かっこよかった!」
「うん。ロングヘアが、床までつきそうだった! ハイヒールなのに」
いったい何処を見ているのやらだが、長く同じものを好きでいると、視点も似てくるものなのかもしれない。だが、と、ふと疑問が浮かんだ。
最前列右側のわたし達の前に、香川は常にいた。エンディングで深く礼をする時にも。目がいったのは、当然とも言える。
「視点って、感性や心の位置でも、実際いる位置でも変わってくるんだなぁ」
またも当然のことに、驚いてしまった。
さて、視点を変えて、この文章に『浮』の字はいくつあるでしょう?ふふふ。

本を読み、芝居を観る幸せ。仲間に教えてもらいました。

ゆっくりランチでお喋り。「村上春樹の短編集、いいらしいね」
「あ、これ?」と鞄から本を出し、わたし。「面白いよ」
「『ポテチ』の中村監督作品『白雪姫殺人事件』観た?」「まだー」

昨日の八ヶ岳。雲も、浮力で浮かんでいるのかなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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