はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『水』

伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間に誘われて、芝居を観に行った。前回と同じく『アマヤドリ』という劇団のもので、タイトルは『水』

ヒソップとシトロネラは、恋に落ちた。だが、すぐにシトロネラの奇病が発覚する。水を飲むと、身体じゅうが湖になり、溺れ死んでしまうという不思議な病だ。1日に口にしていい水は、スプーン2杯だけ。二人は、そんな闘病生活に疲弊していく。
シトロネラは、子どもの頃、湖で溺れかけたことがあり、水面を見上げる記憶を胸に持っていた。そして一緒にいた母親は、自分が娘に何もできず、ただ震えていたことを悔み続け、ひきこもる生活を送っている。
今、そして過去。身体のなかの湖、そして、見上げる水面。流れてしまった水は、決してもとには戻らない。
悲恋のストーリーは、まるで水の中で二人を祝福しているかのような、ゆったりとした踊りを交え、美しく幕を閉じた。

帰り。駅の喧騒を歩きつつ、早足に通り過ぎる人の波を、見るともなく見ていたら、感覚にずれが生じた。彼らも自分も、スローモーションで水の中を歩いているかのように思えてきたのだ。ひとりひとりの顔をそっと見てみる。無表情な若者。笑いながらしゃべり続ける少女達。疲れた顔の中年男性。幼子の手を引く母親。寄り添うお年寄りのカップル。
その誰もが、流れてしまった水を、もう戻らない過去を抱えている。
いい意味であれ、悪い意味であれ、その過去に影響されながら、みな生きていくのだなと思った。

水の流れのなかで、ひとり立ち止まる。
過去は、今や、これからのためにあるのだと、水面を見上げた。

西武池袋線の椎名町駅から徒歩8分。小さな劇場です。
椎名町は、手塚治虫が住んでいた『ときわ壮』があった町なんですね。

台本とチケット。雨天決行というフレーズには、こだわりがあるようです。
『アマヤドリ』という劇団名に、かけているのかな。
登場人物が、すべてハーブや植物の名前になっていて、お洒落です。
水がなければ枯れてしまうものに、したかったのかも知れません。
人も動物も、水がなければ生きていくことはできませんが。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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