はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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判子といえば

はりねずみの絵が入った判子を作った。ファンクラブ(在籍2名)の仲間に見せると、また伊坂トークが始まった。
「判子といえば」
「『ゴールデンスランバー』(新潮社)だよねー」
「たいへんよくできました、の判子ねー」
主人公の青柳は、数年前晴子にふられていた。わたし達ってこのまま一緒にいても絶対「よくできました」止まりな気がしちゃうよね。それが別れの言葉で、青柳は何度も思い返す。子どもの頃から一度だって「たいへんよくできました」の花丸をもらったことがない。「よくできました」止まりの人生だと。

昔は故郷に続く道があったという歌詞で始まる『GOLDEN SLUMBERS』は BEATLESの『ABBEY LOAD』というアルバムに入っている。青柳の友人森田が久しぶりにやってきて、この歌を口ずさむ。そして唐突に「故郷に続く道っていうと反射的におまえらと遊んだ頃を思い出すんだ」と話す。
「伊坂って、東北大学時代がほんとに楽しかったんだね」
「うん。この話だって、大学時代の友人たちがメインだもんね」
「青少年食文化研究会」
「ファーストフード店に集まって雑談する集団ね。冬には雪掻き部になったりもする」
「青柳と晴子と森田」
「森の声が聞こえる森田ね。それから後輩のカズの4人」
青柳は、身に覚えのない首相暗殺の罪をかぶせられ、追われることになった。行ってもいない場所で自分が目撃され、犯人に仕立て上げられていく。久しぶりに会った森田は、逃げろ、人間生きててなんぼだとだけ伝え、殺された。
「この本で見事なのは、なんといっても伏線回収の技だよね」
「伏線回収のお手本みたいな本だね。伊坂の伏線回収には定評があるけど」
物語の初めの方に出てくる小さなエピソードが、終盤思いもよらない形に姿を変えていく。伊坂幸太郎は、様々な伏線を散りばめておき、それを回収していくプロだ。
「青柳、おまえはロックだよってのが、好きだったな」
「お父さんに書初めで書かされた痴漢は死ねも、いいよね」
「お茶碗にいつもごはんつぶ残すってのも、印象的」
「だと思った、って一言も」
「でもなんと言っても、エレベーターのシーンがいいねー」
ふたたび、ふたりうっとりする。
「伊坂いいよねー」

ひとりで映画が好きなわたし達だが、『ゴールデンスランバー』は、めずらしく一緒に観た。青柳を堺雅人、晴子を竹内結子、森田を吉岡秀隆が演じていた。脇役ではあるが伊東四朗が青柳の父親役で、伊東四朗ってすごいと思ったのを覚えている。
「でもあの森田は、森田じゃないね」
「歌はうまかったけど、森田じゃない人になってたね」
ふたりとも森田が好きだったので、その部分にはとてもがっかりした。森田は青柳よりキャラが濃い。それで薄めたのかなというような普通のいい奴になっていた。吉岡秀隆が口ずさんだ『GOLDEN SLUMBERS』には聴き惚れてしまったけれど。
「映像でしか見られない迫力はあったね」
「花火のシーンはよかったよねー」
「そういえば『ポテチ』でさ、竹内結子がエキストラの通行人やってるんだって」「うそ。ぜんぜんわかんなかった!」
話は、いつも脇道にそれていく。脇道がたくさんあるからどうしようもない。


「邪悪なハンコ屋しにものぐるい」で作りました

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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