はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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キリンは食べないよね?

ふたたびオーストラリアの娘からメールが届いた。
「カンガルーには会ったし触ったし、食べたよ。美味しかった!」
末娘がそれを聞き、後ずさった。
「わたしがカンガルーだったら近寄りたくない。おねえ、超恐い!」
自分がカンガルーだったらと言う時点で、彼女はもうパニックに陥っている。しかし自由奔放な長女が、オーストラリアでたくましく生きていることは想像できた。
「そうか。カンガルーを食べるんだ」またも新しい発見だ。
 
発見で思い出すのは『フィッシュストーリー』(新潮社)に収められた短編『ポテチ』に登場する空き巣、今村忠司だ。彼は学校での授業や教科書とそりが合わなかったらしく知らないことが多かった。そして自ら発見した。「万有引力の法則」と「ピタゴラスの定理」を。
「知らないってことが発見につながるってことを、ユーモアたっぷりに表現してるよね」伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間に言うと、
「あのシーン大好き! さすが伊坂だよねー」と同意した。
「おまえはニュートンか? って言う黒澤もいいね」
黒澤は、今村が慕っている泥棒だ。
「うん。黒澤優しいよね。今村の発見を馬鹿にしないでちゃんと聞いてあげようとしたもんね」「実際すごいよ、今村」「うん。今村すごい」
映画にもなった『ポテチ』は、野球と赤ん坊取り違え事件と空き巣今村の心温まるストーリー。
今村は空き巣に入った家で「死ぬことにしたから。飛び降りちゃうから」という女性の留守電を聞いてしまいリダイヤルする。
「今から行くから。キリンに乗ってくから!」
知らない女性を必死に助けようとする今村は、伊坂の小説の中でも大好きな登場人物のひとりだ。
はたとそこで考えた。オーストラリアでも、まさかキリンは食べないよね?

「キリンだよ? キリンが空飛んじゃうんだよ?
 俺だったら見てから死ぬなぁ」
映画では濱田岳くんが愛すべき今村を好演した。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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