はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『キャプテンサンダーボルト』

伊坂幸太郎と阿部和重の合作小説『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)を、読んだ。昨年11月に出版され、すぐに購入したにもかかわらず、ここまで積読状態だったのは「完全合作」って何? という戸惑い以外にはない。

『冷静と情熱の間』のように、かわりばんこに二人の作家がかき上げていく、というのなら理解できる。だが、全部を二人で、と言われると、どうやってかくの? との疑問が先に立ち、読んでいて気が散るのだ。しかし、救いは阿部の小説を読んだことがないことにあった。
「伊坂ひとりでかいたと思って、読むしかないな」
伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)のメンバーとしては、そうでも思わないと、どうにも落ち着かず、読み進めることができそうになかったのだ。

金に困った29歳の二人の男がいる。相葉は、後輩を助けるべく一肌脱いだがために騙され、母親が住む小さな雑貨屋を売られてしまい、井ノ原は、息子の治療費で借金がかさんでいた。最初は借金を返すことができればと、それだけだった。だが彼らは、偶然なのか運命なのか、国がらみの機密に足を踏み入れてしまい、警察からもテロリストからも追われる羽目に陥る。以下、その機密に近づいて、無実の罪を着せられ、人生を台無しにされた男の台詞。

「いいか、理不尽なものは、いつだって、理不尽にやってくる。そうだろ。病気も災害も、自分の力ではどうにもならないものが、突然やってくる。俺たちは毎朝、フォーチュンクッキーを引いて、たまたまそこに『今日は死にません』と書いてあるだけの、そういう日を過ごしてるようなものだ」

しかしそれでも、相葉と井ノ原は、走る。比喩ではなく、世界を救うために。
この物語は、二人の再生のストーリーでもある。小学生の頃、無心で野球をしていた彼らは、冴えない大人になってしまったと、昔の自分に申し訳ないような気持でいたのだ。
迷いつつ進んでいる時、このままでいいのかと考え直そうとすると、邪魔になる気持ちがある。時間や金をかけ、ここまでやってきた自分を否定するのかという気持ちだ。だが、井ノ原は思う。出口の見えぬ道を歩いていくくらいなら、一度引き返すべきなのではないかと。まあ、引き返してもまた、歩きだしては更に迷うのが、人生なんだけど。
「何でも人生に譬えるような大人にだけはなりたくなかったんだけどな」
とは、相葉の台詞だ。

伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間も「合作ってどうよ?」と明らかに動揺し、まだ読んでいないようです。伊坂色満載だよと、アドバイスするつもり。伊坂お得意の伏線回収も効いているし「昔のレコードも、当時の新譜」など、伊坂っぽい台詞もたくさん登場します。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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