はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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白い葱、白い時間

久しぶりに、思いっきり白髪葱を刻んだ。
夫が、薪割り仲間と持ち寄りで打上げをすると言う。ワインではなく、日本酒を好む年上の二人は70代だが、まだまだ薪ストーブ現役選手だ。チェーンソーで木を伐り倒し、丸太を運ぶ力仕事は、並大抵の労力ではないはずだが、淡々とこなす頼もしい老人達である。夫とふたり内緒でこっそり、尊敬の念を込め「年寄りの冷や水ペア」と呼ばせてもらっている。

「最近食べてないねぇ、葱鶏。味忘れちゃったよ」と、夫。
「最近作ってないもん、葱鶏。ワインには辛すぎて合わないかなって」
茹でた鶏肉の上に、たっぷりと白髪葱をのせて、醤油と酢、豆板醤のタレをかけて混ぜながら食べるこのレシピは、小林カツ代の料理本で覚え、アレンジしながら何度も作った味。何年か前に亡くなった我が家の設計士さんにも褒められ、レシピを聞かれたことを懐かしく思い出す。

太くしまった長葱を選び、白い部分を3本~4本千切りにする。切った先から水に放つと、水分を吸いくるんと丸まっていく。白い葱。白いまな板。トントンと刻む包丁の音。何も考えず湖の底にでもいるような白い時間。
久しぶりに白髪葱を刻み、思い出した。ああ、この白い時間が好きだったなぁ、と。白は無ではないけれど、無と似ている。そして、くるんと丸まった瑞々しい葱は、やはり無に似た透明な光を放っている。

わたしは、白い時間を欲しいていたのか。無を求めていたのかと、考えてみる。そして、子ども達と過ごした喧噪とも言える時間のなかに、しんと静まった時を求めていたのかも知れないと、思い当たる。
今はもう、時問わずキッチンはしんと静まっている。水に放ち、くるんと丸まった白い葱に問うてみても、もちろん何も言わない。

鶏が見えないくらいたっぷりの白髪葱。でも最後に残るのはいつも鶏です。

くるんと丸まっていく不思議。繊維と水分の戦いが見えます。

タレをかけると「美しい」から「美味しそう」に変身します。
*レシピメモ*
茹でた鶏もも肉を適当に刻み、胡麻油を絡めておく。
白髪葱をたっぷりとのせ、醤油大さじ2、酢大さじ1と豆板醤少々を混ぜて、
食卓に出す前にかける。混ぜ合わせながら、いただく。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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