はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『やぶへび』

いやー、面白かった。さすが、大沢在昌。ハードボイルドならこの人、という作家だが、小説『やぶへび』(講談社文庫)は、強くもなければかっこよくもない四十男が主人公のエンターテイメントだ。以下、本文から。

「ノーマネー、ノーハニー」とはよくいったものだ。懐がここまで寒ければ、女など作れる筈がない。
もっとも考えてみれば、人生の曲がり角にはたいてい女がからんでいて、結果必ずといってもいいほど悪いほうに向かっていったような気がする。
それはつまり、甲賀悟朗(こうがごろう)が女好きだからに他ならない。

甲賀は、金のために中国人の女と偽装結婚していた。その会ったこともない妻、青珠(ちんじゅ)が警察に保護され迎えに行くと、なんと記憶を失っていた。とりあえずのつもりで一緒に帰ったのだが、彼女には追手がいて、ふたり追われる羽目に陥る。

この小説のキーになるのは、記憶をなくした青珠のキャラクターだ。甲賀は元刑事だが、特別腕がたつ方じゃない。ピンチを切り抜ける際、発覚したのは、彼女が武術の達人だということだった。美しく優しく、強い女性。これで、俄然面白くなっていく。そして、甲賀は自分が助かる算段をしつつも、結局は青珠を見捨てられないのだ。

「オオサワアリマサは、いいな」ひとりごちる。
彼の小説に登場する主人公達は、強く賢くかっこいい人物であろうと、甲賀のようにその真逆をいく人物であろうと、決して仲間を裏切らない真っ直ぐさを持っている。数字で言うと1のような真っ直ぐさ。だからわたしは、心が数字の2や3やメビウスの輪のようにねじれてしまった時に、大抵、彼の小説を読む。読めない時には「オオサワアリマサ」と唱えたりもする。世界中で彼の小説が読まれれば、世界平和も夢じゃないような気がするけど、ハードボイルド小説を読んでそんな風に考えるのは、わたしだけなんだろうな。多分。

お洒落なタイトルも多い大沢小説。『やぶへび』は異質かも。でも、
このタイトルは、中身に深くかかわっていて、ピタリとハマっています。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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