はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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珈琲と砂時計

神戸で暮らす義母が、心臓弁膜症の手術をして入院した。手術は成功し、その後も順調だ。
義母が最初に入院したのは真冬のこと。病院までの道すがら冷たい空気を吸い込むと、不意に珈琲の香りが鼻先をかすめた。ふらふらと乗り継ぎ駅構内の珈琲屋にふたり入ってていったのを思い出す。ただ温かく座れる場所さえあれば、珈琲の味などどうでもいいと思っていた。だが、義母と顔を見合わせた。
「あ、美味しい」
「ああ、ほんと。美味しいわねえ」
そう笑い合い、すっと気持ちがほどけていくのが見えたような気がした。やわらかい苦味とほどよい酸味、そして温かな香り。
義母が入院し、それから何度となく、そこの珈琲を口にすることとなった。
あるときふと、ディスプレイされた砂時計に目が留まった。もちろん砂は落ちたままで時計としては止まっている状態だ。その向こうは窓になっていて、駅構内を早足で歩く人がひっきりなしに通り過ぎていく。止まっている時計と、前へ前へと進んでいく人達。その対比がおもしろく、珈琲を飲みながら、ぼんやりと眺めた。
(砂時計って、実用云々よりも、時間を目に見えるようにしたくて作られたモノなのかも知れないな)
時計の針の進み具合は、人の目にはゆっくりすぎて見ていてもよくわからない。けれど砂時計ならば、時間というモノがしっかりと目に見える気がする。そんなことを考えていたら、行きかう人の波が、時間を刻んでいる砂時計の砂のように思えてきた。
そして義母の心臓も、今この瞬間時を刻んでいる。そう思うと、一瞬一瞬の時間の重さが胸に落ちてきた。
珈琲の香りが見せてくれた。
いつもは目に見えない、ほどけていく気持ちや刻まれていく時間を。

スープセットモーニング。夫はスクランブルエッグ&ハムのセットを。

大小の砂時計が、飾ってありました。何分計だろうか。

セピア色の落ち着いた雰囲気の地球儀も、素敵です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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