はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『異類婚姻譚』

芥川賞を受賞したばかりの本谷有希子『異類婚姻譚』(講談社)を、読んだ。本谷作品はまだ『嵐のピクニック』一冊しか読んでいないが、その奇抜な着想に思う存分楽しませてもらい、また読みたい! と思っていた。そして、受賞作のこの小説にもまた、思う存分楽しませてもらったのだった。今回は「奇抜さ」もさて置きながら「気味悪さ」にぞくぞくさせられた。文章は小気味好く読みやすいのにもかかわらず、気味が悪い。「小気味好い気味悪さ」とでも言おうか。夫婦が、共に生活することにより、自分と相手の境目が曖昧になっていく。というようなストーリーだ。
弟の恋人、ハコネちゃんと結婚観について話していた主人公、サンちゃんは、蛇ボールの話を聞く。たがいの尻尾を共食いしていき、やがて頭と頭だけのボールのような形になり、ついには両方ともが食べられて消えてなくなるのだという話だった。以下、本文から。

ハコネちゃんの話には、ひそかに感心させられた。
というのも、これまで私は誰かと親しい関係になるたび、自分が少しずつ取り替えられていくような気分を味わってきたからである。相手の思考や、相手の趣味、相手の言動がいつのまにか自分のそれにとって代わり、もともとそういう自分であったかのように振る舞っていることに気付くたび、いつも、ぞっとした。やめようとしても、やめられなかった。おそらく、振る舞っている、というような生易しいものではなかったのだろう。
男たちは皆、土に染み込んだ養分のように、私の根を通して、深いところに入り込んできた。新しい誰かと付き合うたび、私は植え替えられ、以前の土の養分はすっかり消えた。それを証明するかのように、私は過去に付き合ってきた男たちと過ごした日々を、ほとんど思い出せないのである。

サンちゃんは、夫の顔が自分に、自分の顔が夫に似ていくさまを、恐怖と諦めの狭間で見つめていくのだが。

毎日同じご飯を食べ、同じテレビを観て、セックスをし、子どもを産み育てていく夫婦というモノ。自分と相手の境い目が判らなくなってしまったとしても、全く可笑しなこととは言えないよなあ、確かに。
読み進めていくうちに、この小気味好い気味悪さを、するりと受け入れてしまっている自分にもまた、驚かされたのだった。

風変わりな、おかめとひょっとこの表紙です。
表題作のほか、3つの短編が収録されていました。

リスさん達、可愛いけど、怖いよ~。それ、化かし合いしてるの?

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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