はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『希望荘』

宮部みゆきの杉村三郎シリーズ最新刊『希望荘』(小学館)を、読んだ。
4編の推理小説から生る、連作短編集だ。杉村三郎は、菜穂子と離婚し、今多コンツェルンを退職して2年後、東京で私立探偵をしていた。

『聖域』では、死んだはずの老婦人を見かけたと近所の女性から相談される。
『希望荘』は、「人を殺めたことがある」と匂わせる告白を残し亡くなった老人。父の真意を確かめたいという男性から依頼される。
『砂男』では、杉村が、離婚後しばらく身を寄せていた故郷(なんと、どう考えてもここ山梨県北杜市らしい!)で事件に巻き込まれる。
『二重身(ドッペルゲンガー)』では、東日本大震災のとき行方不明となった母の恋人を探してほしいと女子高生に依頼される。以下『二重身』より。

「不吉だというのは、ドッペルゲンガーを見ると間もなく死ぬという謂れがあるからでしょう」
昭見社長は面食らったらしい。
「貴方も詳しいんですね」
「僕はこの稼業に入る前に、編集者をしていたことがあるんです」
「それはまた、畑違いな転職をしたものですな」
「はい、いろいろありまして」
実は、と指で鼻筋を掻きながら、昭見社長は言い出した。
「私どもの親父が、その体験をしているんです。会社から帰宅したら、玄関先に自分がいて、座って靴を脱いでいたと」
驚いて立ちすくんでいると、その分身は悠々と家の奥へ入っていったそうだ。
「慌てて後を追いかけても、姿は消えていた。親父があんまり騒ぐので、母は救急車を呼びそうになった」
それから三日後、昭見兄弟の父親当時の昭見電工の社長は脳出血で急死した。
「葬儀のとき、母からその話を聞いた豊が言い出したんです」
親父は、ドッペルゲンガーを見たんだ。

読み終えて思うのは、やっぱり杉村三郎はいいな、ということだ。
何がいいって、人と対峙するときの姿勢がいい。例え相手が子どもだとしても、決してばかにしたり大人ぶったり、あるいは媚びたりもしない。どんな相手に対しても尊敬できるところは尊敬し、受け入れられない部分は受け入れない。常にフラットでいる、という感じ。それは、相手に対する先入観に左右されないということだ。彼の根底にある人間を尊重する気持ちが、そうさせているのだろう。探偵としても、たぶんそこが武器となっているのだと思う。
左足の不自由な若き調査事務所所長、蛎殻昴という魅力あふれる新キャラも登場した。私立探偵杉村三郎シリーズのこれからに、ますます期待したい。

『誰か』と『名もなき毒』では、仲睦まじい三郎、菜穂子夫婦のファンでしたが、『ペテロの葬列』でふたりが離別し、驚かされました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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