はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『サファイア』

軽いミステリーが読みたくなり、湊かなえの短編集を手にとった。7つの短編それぞれに宝石の名をタイトルにつけた『サファイア』(ハルキ文庫)だ。
『真珠』は、しつけの厳しい母親に反発して生きてきた女性を。
『ルビー』は、施設で暮らす老人と交流する家族を。
『ダイヤモンド』は、結婚詐欺にひっかかった男性を。
(ラスト、ぞくぞくっと怖くなったのはこれでした)
『猫目石』は、猫を助けた家族の秘密を。
『ムーンストーン』は、一対のピアスを分けた女子中学生たちのその後を。
(じわりと泣けたのは、これです)
表題作『サファイア』は『ガーネット』と対になっていて、二十歳の誕生日に恋人を亡くした女性を。どれもミステリー色濃く、描いている。
以下『ガーネット』本文から。

彼女のことを悪く言われたのが気に入らなかったのか、その人は、自分が彼女を好きになったのに外見は関係ない、とはっきり言い切ったのです。ならばどういうところだ、と訊き返しました。その人はこんなふうに言いました。
自分は、彼女を通して見える世界が好きなのだ。同じ景色を見ているのに、彼女の語るその景色には自分には見えない色があり、匂いがあり、空気がある。それは自分一人では気づくことができないけれど、彼女を通して見えたとき、ずっと自分が探していた世界のように感じることができる。だから一緒にいたいのだ。視力の悪い人にとってのメガネのような存在なのか、と訊ねました。そんな気もするけれどちょっと違う、と言われました。
自分の目に映る世界にまだ向こう側があることを教えてくれる、映画監督や作家のような存在かな、と。

宝石と言えば、美しい。そして、高価なものである。だからなのだろう。愛の証として贈られることが多い。「美」「金」「愛」の象徴のように思える。
しかしその3つの裏には、妬み、憎しみ、裏切り、企て、別れ、そして詐欺や殺人までもが、うごめいている。人の心の深い闇の恐ろしさと、そのなかで無垢な宝石のように光る人の思いの温かさを、光と影を交互に見せていくかのように描いた短編集だった。

モノクロの裸体に色とりどりの宝石達。ハッとする表紙です。
わたしの誕生石(2月)は、アメジスト。
透き通った薄紫色の宝石には、どんな物語があるのかな。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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