はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『もう二度と食べたくないあまいもの』

井上荒野の短編集『もう二度と食べたくないあまいもの』(祥伝社文庫)を、読んだ。
タイトルに魅かれ衝動買いしたのは、自分が甘いものが食べられない体質になってから、もう長く、それがコンプレックスになっているからだ。
しかし、小説のなかには甘いものは登場しなかった。このタイトルは、一つの短編を表題作としてつけらえたものでさえなかった。
ここでいう「甘いもの」とは「恋」なのである。それを二度と食べたくないというのだから、描かれているのは「甘いもの」ではなくなった男女の関係だ。

『奥さん』では、移動販売でカレーを売る男が、団地で集まる気に入った奥さんと、とっかえひっかえ情事を繰り返す。挙句、奥さんの一人に告発されることになるのだが。以下本文から。

四号棟の奥さんの仕業であることは、火を見るよりもあきらかだった。いやなことをさせてしまったな。彼は心から気の毒に思った。こんなことをするほど傷ついているなんて思わなかった。どうせビラを持ってきたのなら俺がいるときに来ればよかったのに。そうすれば気がすむまで怒鳴られてやったし、あらためて打たれてやってもよかったし、そのあと慰めてやることもできたのに。

『朗読会』では、朗読会で出会った男との関係を続ける美紗と、それに気づいていながら黙認している隆との夫婦関係を、美紗の語りで描かれている。
以下本文から。

裏切っていた? その言いかたは、でもじつは、あまりしっくりこない。道を間違えた、というほうが正確に思える。悪い道にいる。善悪の悪ではなくて、wrong wayにいると感じている。選択を誤ったという意識はなくて、いつの間にかその道を歩いていた。

全編通しての共通項は、答えを示さないこと。その突き放したとも言えるラストには、びっくりするようなどんでん返しはなくとも、小説は、静かに広がるような驚きを感じさせることができるのだという発見があった。

カラフルな明るい表紙が、読み終えた後、悲しく見えてきます。

目次です。どれも、シンプルなタイトル。その潔さにも魅かれました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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