はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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風鈴ひとり

涼しげな音色だと思ったら、末娘の部屋の風鈴だった。
「主はいなくとも、風鈴は鳴るんだな」と、夫。
彼女はこの春、大学入学とともに県外でひとり暮らしているのだが、学生生活は思いの他楽しいらしく、夏休みの帰省もいまだ日にちすら決まっていない。
だがこう暑くては、エアコンのない我が家では窓を開け放つしかなく、末娘の部屋も例外ではない。玄関でも、彼女が小学生だった頃に家族旅行した佐渡の無名異焼き(むみょういやき)の風鈴が音を鳴らしているが、焼き物らしい割りと落ち着いた音だ。
何処で買ったんだか、誰かに貰ったんだかわからないが、末娘の部屋の風鈴はガラスで、風が吹く度に高音の綺麗な音色を奏でてくれる。
音で涼を感じ、ガラスで作られた風鈴の揺れる姿にまた涼を感じる。日本の素晴らしい文化だ。

20年と少し前、東京は大田区に住んでいた。東京といっても隅っこで、都会という趣きではなかった。その町で上ふたりの子ども達は生まれた訳で、思い出せば様々な出来事が果てしもなく浮かんでは消え頭をよぎるのだが、風鈴売りの屋台が通って行くのを見かけた時のことは鮮明に覚えている。

風鈴は、ひとつふたつだと涼しげな音を鳴らすが、30や40の風鈴が、風が吹く度にカラカラカランと鳴り、屋台を引く振動でまたカラカラカランと鳴る音は、涼しげというよりはにぎやかで祭りのようだった。
様々な色形の風鈴が揺れる姿には涼を感じたが、またまるで祭りの人ごみのようだなとも思った。風鈴の人ごみ。人ごみを歩く人も、それぞれひとりの人であるように、たくさんのなかに置かれても風鈴でさえ個なのだと思えた。
売れて行った風鈴達は、末娘の部屋で揺れる風鈴の如く風に揺れ、何処かでひとり、凛と涼しげな音色を奏でているのだろう。
風鈴に涼をもらいつつ、遠い昔に見た風鈴売りと、家族から離れて個となり暮らす娘を思った。
   
末娘の部屋の風鈴には、昔ながらの金魚の絵が描かれています。
玄関の無名異焼きの風鈴は、金属が混じっているような音色。
風よ、吹け吹け!

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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