はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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逆ソクラテスにならないために

「アンソロ『Boys』の『逆ソクラテス』いいねー」
伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間に言うと、
「今頃読んだの?」と、あきれられた。
彼女はエッセイまですべては読んでいないものの、伊坂小説作品は読破し本棚に並べてある。伊坂は文庫化の際、必ず手を入れるので文庫も揃っている。
「のんびり読むのもいいもんさ」と、わたし。
読んでいない作品があると言うことは、こうしてお宝を探り当てる感動にも、まだまだ巡り合えるということでもある。しかし彼女に言わせると、
「それで伊坂が好きって、よく言えるね」ということになる。
だがわたし的には、これくらいが丁度いい。夢中になりすぎるのは性に合わないのだ。村上春樹も、20代の頃から本が出るたびに買って読んでいた。小説はまあ、だいたい読んだと思う。
「でも、ハルキストじゃないからね」と断言する。村上春樹には盲目的なファンが大勢いて、ハルキストと呼ばれ、生活スタイルにまで影響を受けている人も多いと言う。フルマラソンに挑戦したり、ジャズにハマったり。
「夢中になりすぎるのは、みずがめ座っぽくないしね。でも『逆ソクラテス』はよかった。短編だけど小さな伏線きれいに張るとこなんか理系っぽくて」
「伊坂、法学部卒だけどね」「だよねー」
「法学部卒のエンジニアだった小説家」「わけわかんないよねー」

『あの日、君と Boys』(集英社文庫)に書き下ろした『逆ソクラテス』は、主人公が小6の時の数か月を思い出す形でかかれた小説だ。
転校生、安斎は、先入観が強く影響力もある担任教師の、その先入観を崩そうと主人公に持ちかけた。
ソクラテスの言葉「無知の知」自分はすべては知らないということを知っている、の逆が担任教師で「いつでも自分が正しいと思い込み、決めつけて生徒に押し付けようとする」タイプ。だから「先生にも、知らないことがあるんだとわからせよう」と作戦を立てる。優等生だが母親が自分の考えを押し付けることに辟易していた女子、佐久間と、担任教師ができない生徒だと決めつけ見下す男子、草壁と4人で計画を実行していく。
キーになるセリフは「僕は、そうは思わない」
安斎が、主人公や草壁に教えた言葉だ。決めつける奴らに負けない方法は、「僕は、そうは思わない」と表明する。または、絶対に受け入れないという強い心で念じるだけでも、全く違うと。

先入観。いつも持たずにと思ってはいるけれど、自分の中から、ふと顔をのぞかせているのに気づくことも多い。逆ソクラテスにはなりたくない。

村上春樹コーナー。『ノルウェイの森』は友人に20年の約束で貸し出し中。
ハルキストを否定しているわけではありません。
そこまで夢中になれる人って、すごいなぁと素直に思います。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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