はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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人生については誰もがアマチュアなんだよ

「『ラッシュライフ』(新潮社文庫)って伊坂2冊目の本なんだね」
伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間に言うと、
「そうだよ。サブタイがまた、かっこいいんだ」と文庫を開いた。
サブタイトルを並べた目次はなく、エッシャーのだまし絵をめくると、
『最高時速240キロの場所から物語が始まる』とある。
「気づかなかった。確かに、かっこいい」とわたし。
「でしょ。ラッシュの意味が4つ、リーダーズ英和辞典からちゃんと転記してあるのも好きだな」と彼女。
「気づかなかった。意味がかいてあるのは覚えてたけど」
簡単にかきだすと「むち打つこと」「豊富な」「無分別な」「殺到する」
それぞれスペルが違う。名詞では「飲んだくれ」なんて意味もある。
そんなラッシュのいくつかの意味を、いくつかの人生に重ね、物語に織り込んだのが『ラッシュライフ』だ。
 
侵入した家に親切にも取った金の額や場所を手紙を残す泥棒、黒澤。
「基本とウォーミングアップはどんな仕事にも必要だ」
神を解体しないかと持ちかけられる絵が得意な青年、河原崎。
「ああいう大きな、人間の人生なんかとてもじゃないけど敵わないものに、会いたい気分なんですよ」
浮気相手の妻を殺そうと拳銃を購入するカウンセラー、京子。
「計画なんて大まかでいいのよ。細かいと逆に行動を縛っちゃうの」
家族と職を失い野良犬を拾う四十男、豊田。
「怖れるな。そして、俺から離れるな」
金と権力とですべてを手に入れ生きてきた画商、戸田。
「今、この瞬間に生きている誰よりもわたしは豊かに生きている」
 
「ラストが秀逸だよね。イッツオールライトがいい!」
「時間差がキーなんだよ」と彼女。「精密に作られてるね」とわたし。
「緻密」「偶然性の妙」「洗練と原石の隙間をかいくぐる文章」
「そして、黒澤! 黒澤! ああ黒澤!」
彼女は『ラッシュライフ』の話をしていると時々こうなる。
「伊坂がさ、あ、間違えた。黒澤がさ」とわたし。
「ぜんぜん違うよ! 黒澤は伊坂よりかっこいい!」
彼女はそう主張した後、思い出したように言った。
「『ラッシュライフ』映画になってるらしいね」
「うそ、気づかなかった」
「評判が悪い」苦虫を噛み潰したような表情の彼女は、
「大学の映画研究会とかが撮影したらしいよ」と続けた。
「伊坂、映画好きだもんね。そういう場に作品提供しそう」
「キャストは結構有名所。黒澤を堺雅人がやってる」
「あー、それ面白そうだけど」そこでふたりうなだれる。「不評」
「観るか」「観るしかないね」
だが、そのまま映画は観ていない。

人生については誰もがアマチュアなんだよ
誰だって初参加なんだ 全員がアマチュアで新人だ
初めて試合に出た新人が失敗して落ち込むなよ by黒澤


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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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