はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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きみの言う通りだ

「きみの言う通りだ」というおまじないをよく使う。
日常、小さなことで人と人とは意見の食い違いをみる。たとえば、洗濯物を外に干すか、家の中に干すか。太陽が照る日中、外に干すのは気持ちがいいが、薪ストーブの真上、吹き抜けの2階の廊下に物干しスペースがある我が家では、冬場、家の中に干した方が乾きは早いし、家の中の加湿効果も上がり一石二鳥だ。なので大抵わたしは家の中に干す。しかし、夫が太陽のあたるウッドデッキを見て言った。
「外に干したら?」
わたしは逡巡した。昼に宅配便で届いた夫の洗濯物は、午後から外に干しても乾かないだろう。しかし心の中でつぶやく。
「きみの言う通りだ」
そして「そうだね」と言って、洗濯物をウッドデッキに干した。洗濯物は、夕方結局2階に干し直さなくてはならなかったが、太陽にあてるのは気持ちがいい。外に干してもいい点と悪い点があり、中に干しても同じなのだ。

伊坂幸太郎の『グラスホッパー』(角川文庫)の主人公、鈴木は亡き妻のことをよく思い出した。
「彼女は、きみの言う通りだと同意されると、どんな時も機嫌がよかった」
鈴木の妻は、物語が始まった時にはすでに死んでいたが、とても可愛らしく、わたしも伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間も、彼女が好きだ。そして鈴木は妻の口癖「やるしかないじゃない」に「きみの言う通りだ」と心の中で答え続け、危険な組織から逃げ切った。その『グラスホッパー』を読み、わたしは、このおまじないを覚えた。
ともすれば、自分の考えばかりに偏りがちになるが、このおまじないを唱えることで自分以外の人の考えを取り入れることができる。
その時には反論しても、後からだっていい。「彼の(または彼女の)言う通りかも」と振り返ってみる。
そうして自分の中で誰かの考えが広がっていく時、目の前の道が、ほんの少しだけ広がったような気がする。その感覚が好きだ。
それに加え「きみの言う通りだね」と言葉にして言うと、夫も鈴木の妻のごとく、やはりとても機嫌がよくなる。これも一石二鳥かな?

ウッドデッキに干した洗濯物と、冬枯れの隣の林。
庭に小さく写っているのは、夫が置いた野鳥用の水場と、焚き火台。
ヤマガラやシジュウカラがやって来ます。
カケスやツグミ、ジョウビタキも見かけるようになりました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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