はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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疲れた時にはヴァン・ショーを

八ヶ岳が雪に染まった朝、12人の小人の夢を見た。
「パンが11個しかない時、僕らはどうすると思う?」
一番年かさの小人がわたしに問う。答えられずにいると彼は言った。
「全部のパンを12個に切り分けて、みんなで同じだけ食べるのさ」
なるほど。
年かさの小人は、まだヤンチャ盛りの小人達をまとめるのに苦労していた。出席をとるように名前を呼ぶのだが、悪戯するように何人もの小人が手を上げる。彼は肩をすくめてその名の小人を探し、ちゃんとそこにいることをチェックしていた。
「この夢は何かの暗喩なのかな?」娘に言うと、
「お母さん、疲れてるんじゃない」と心配そうな顔をした。
そうか。疲れているのか。
そう思ったら、ヴァン・ショーを作ってみたくなった。以前読んだ近藤史恵のコージーミステリー『タルト・タタンの夢』(東京創元社)に出て来たスパイシーなホットワインだ。ビストロ「パ・マル」の三舟シェフが、疲れている人や心がカサついている人にヴァン・ショーを出していたのを思い出した。
ネットを検索するとなんと『タルト・タタンの夢』のレシピすべてが動画でアップされていた。さっそくオレンジとシナモンを買い、少し古くなった赤ワインで作ってみた。確かにふわりと温まった。
小人はわたしに何を言おうとしていたのだろうか。
「ひとり減らせばいいのさ」とも「僕が食べずにがまんしよう」とも言わず、彼は愚直に公平に分けることを考え、仲間がちゃんとそこにいるかどうかを気にかけていた。「もっと欲しい」という小人もいるかもしれない。「不公平だ」という小人もいるかもしれない。その時彼は何と答えるのだろう。
ヴァン・ショーで温まりつつ考えた。しかし小人はもう何も答えてはくれなかった。何も答えず林檎の上にあぐらをかき、ただ笑っていた。

安い赤ワインにオレンジとレモンの輪切り クローブ シナモンスティック
全部を鍋に入れ沸騰させて火を止めて 蓋をして10分ほど置きます
スパイスの香りがワインに沁みたら もう一度温めてできあがり
林檎を入れたレシピもスタンダード 甘いのが好きなら砂糖をお忘れなく

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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