はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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一瞬を引き延ばせる力(仮説)

「いたっ!」と、左手くん。
「だ、だいじょうぶ?」と、右手くん。
「だいじょうぶだと、思ってたんだけどなあ」
「たいしたことないよって、言ってたもんねえ」
ミルで珈琲豆を挽きつつの、左手くんと右手くんの会話だ。
「利き手の僕の方が注目されがちだけど、しっかりと押さえる力があってこそミルを回せるし、だから珈琲豆を挽くことだってできるんだもんね」
右手くんの言う通りだ。動きが大きい方が、働きも大きいように感じるが、じつはそうでないことも多いのだろう。
「力には、自信があるんだけどなあ」
左手くんは、右手くんにさすってもらい、力なく言うのだった。

数日前のこと。断捨離に力を入れていたわたしは、段ボール4箱分の古本を処分した。何故そんなにもためてしまったのかというと、表紙が破けていたり、汚れたりしていて何処も買い取ってくれない本を廃棄するのに忍びなく、役立ててくれるところを探していたのだ。それを見つけ、仕分けし、郵便局に取りに来てもらった。わたしにとっては、けっこうな力仕事だった。
「ムリしないで」と夫に言われていたにもかかわらず、ムリだと思わぬままにムリしていたのだろう。自分の身体だが、自分で思うよりもずいぶんと、ムリが効かなくなっているのだ。事故は、そういうときに起こるもの。
本の入った段ボールにつまずき、玄関の三和土から土間へと落下し、転倒した。あっ! と思ってから落ちるまで、何故かスローモーションのように感じられた。その間、たぶん一瞬のことだったのだろうが、スローモーションだったことで考える余裕が生まれた。「手をついてはいけない。今下になっている左手くんは、手の甲を一度骨折している」と。そして身体を丸め、肘から落ちた。結果、左肘の打撲だけで、大事には至らなかった。

「『火事場の馬鹿力』って、とっさのときに、いつもは出せないような力が出せることを言うじゃない?」と、左手くん。
「非力な人が、ものすごい力出しちゃったりする、あれ?」と、右手くん。
「うんでもね、もともと人間って、普段は身体に負担がかからないように力をセーブするようにできてるんだって。だから火事場で出せる力は、本来持ってる力なんだよ」「そうなの?」
「そうなんだよ。だからもしかすると、って思ったんだよね」
「とっさのときに、一瞬を引き延ばせる力もあるんじゃないか、とか?」
「そうそう、昔もあったじゃない。右手くん、大活躍だったよね」
「ああ、あれね。あった、あった」
そう言えば息子が2歳のとき、彼が階段から転げ落ちるさまがスローモーションに見え、上から追いかけたことがあった。途中で右手くんが彼の足をつかむことができ、やはり事なきを得たのだった。
「人の力には、計り知れないものがある、ってことかな」
「もうだめだと思ったときにも、あきらめちゃいけないってことなのかも知れないねえ」

とは言え、大事には至らなかったが、左手くんのダメージは大きかったようだ。打撲だけではなく全体が軋んでいるらしい。
「それにしてもさあ、転ばないように気をつけてくれないかなあ」
「全くだよ。不注意極まりないよねえ。どうにかしてほしいよねえ」
左手くん、右手くん、ほんとうにごめん。

こちらは、落下転倒事件の現場、玄関の三和土です。

左手くん、がんばりました。右手くんも、お疲れさま。
おかげさまで、美味しい珈琲を飲ませていただけます。

カリタの手回しミル。豆を挽く粗さも、好みに合わせてあります。

お気に入りの器達。温かみのあるごつごつした感じが好きです。

美味しく入りました。豆は、イルガチェフェ。ほどよい酸味です。
左手くんと右手くんの会話は → frozenshoulder 徒然で。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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