はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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銀杏を見て、思うこと

銀杏を観に行こうと思いつつ、時を過ごしてしまった。
所用で甲府に出た際立ち寄った、銀杏スポット、山梨県立美術館の駐車場では、すでに多くの葉が散ってしまっていた。
それでも見上げる銀杏の木は、「間に合ったね」と言うように、秋の空とのコラボレーションを楽しんでいるかのように見えた。

よしもとばななの小説に『デッドエンドの思い出』(文春文庫)がある。
表紙は銀杏の葉が敷きつめられた公園のような場所で、子ども達ふたりが走っている。写真を加工したものだろうが、そのふたりが如何にも楽しげで、温かくカラフルなフリースで身をまとい、幸せを絵に描いたような雰囲気なのだ。

婚約者に裏切られボロボロになった心で、ただ時間が過ぎるのを待つように寝たり起きたりするだけの主人公、私。身を寄せたのは親戚が経営する『袋小路』という名のクラブでもバーでもないような小さな店の2階で、事情を知る雇われ店長の西山君だけが、ぽつりぽつりと話をする相手だった。
「幸せって言うと何を思い浮かべる?」と、私。
晴れた秋の日、公園の芝生でふたり座って話していた。
「私は、のび太くんとドラえもんを思いだすな」と、答えを待たず、私。
のび太の部屋で、漫画を読みながらどら焼きを食べている。そのふたりの関係性とか、折った座布団を枕に寝転がっている様子とか、中流家庭の雰囲気とか、ドラえもんが居候であるとかすべてを含め、そこに幸せを感じると話す。
それを読んだ時に、うんうん、わかるなぁと思った。

最近だと、たとえば、上の娘の英単語のテストを手伝っている。彼女がかいた連語30ほどをランダムに並べ替えてかくだけだ。順番を変えても覚えられるようにしたいのだと言う。その娘の字が、判読不可能なことが多く困る。
「きみの字、cなのかeなのか、vなのかrなのか読めないよ」と、わたし。
「えー、お母さんの字だって読めないよー」と娘。
「読めないのは適当にかいたから、スペル違ってたのあったでしょ?」
「それが、全部あってたんだよ」「うそ。それは、謎だ」「謎だ」
娘とのそんな時間にのび太とドラえもんが「私」に感じさせた幸せを重ね、あ、これかも。今、幸せかもと思ったりした。
  
銀杏は、秋の高い青空に似合う、立ち姿をしています。
西山君は空を見上げ「自由な感じかな」と答えました。
自由って、いったい何だろう。

銀杏(ぎんなん)可愛いし、美味しいのに、匂いだけ強烈ですよね。

銀杏(ぎんなん)拾いをする人の姿も、ありました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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