はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『神様が殺してくれる』

森博嗣のミステリー『神様が殺してくれる』(幻冬舎文庫)を、読んだ。
読み始めてすぐに陥った。外国の作家が紡いだ物語のなかにいるような錯覚に。栞を挟むたび、我に返る。あ、森博嗣だった、日本人作家だったんだと。それはラストまで続いた。主人公がフランス人だったからというだけではないだろう。それだけでも森博嗣ってすごいと思わざるを得ないのに、ラスト、きちんと驚かせてくれる辺り、もうミステリー好きにはたまらない小説だった。

一人称の語り手、主人公レナルドは大学時代、年下のレオンとルームメイトだった。親しい間柄ではなかったが、レオンのことは忘れたことがなかった。それはレナルドの特別な感情ではなく、レオンに会ったことがある人ならみな持つものだった。誰もが忘れられないほどにレオンは美しい男だったのだ。
事件は、レナルドがインターポール(国際刑事警察機構)で働くようになってから起こった。パリの女優殺人。ミラノではピアニストの男性が絞殺された。それ以前にも、ベルギーの大富豪が同じ手口で殺されていたことが発覚する。そのすべての事件に関係していたのが、レオンだった。以下本文から。

「あまり詳しいことは言えないのですが、その、殺人現場、イザベル・モントロンが殺されていたその部屋に、リオン・シャレットがいたのです」
「それは、つまり、その、彼が殺人犯だということですか?」
と僕はきいた。当然の質問だろう。
「重要な参考人ですね」刑事は簡単に答えた。
「本人は、何と言っているんですか?」
「それが、私たちがこちらへ来た理由なのです。昨日のことですが、リオン・シャレットは、貴方がモントロンを殺したと供述しました。貴方の名前を挙げた。レナルド・アンペールだと。もともと、神様が女の首を絞めた、と話していました。それを見ていた、とも。ところが、その神の名前が、レナルド・アンペールだと言いだしたのです」
これには驚いて、言葉が出なかった。数秒間、息も止めていただろう。

読み終えて、愛というものが向かう先を、捻じれて変わっていくものを、その不可解さを思った。解説の萩尾望都が、プラトンの『饗宴』を挙げ、人は何故人を愛するのかをかいている。
「大昔、人は背中合わせに張り付いていた。二つの頭、二つのボディ、四本の手、四本の足を持っていた。そのボディの性は色々で、男の性と女の性を持つボディ、男だけの性を持つボディ、女だけの性を持つボディがあった。これらのボディ達はとても満足していた。ところが神様はある日、このボディを二つに分けてしまった。分けられてしまったボディ達はかつて己のそばにいた自分の片割れを追い求めるようになった。元の自分に戻り、悲しみと孤独が消えるように。だから人はかつての自分の片割れを追い求めるのだ。男の性のみだった者は片割れの男を、女の性のみだった者は片割れの女を、男と女の性だった者は己とは違う性を。一つに戻ろうとする祈り、これを愛というのだ、と」

帯の文句「女にしては美しすぎる」は、本文からの引用です。
帯の顔、EXILE / 三代目 JSB 岩ちゃんのことではありませんよ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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