はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『夢幻花』

東野圭吾のミステリー『夢幻花(むげんばな)』(PHP文芸文庫)を読んだ。
花を育てるのが好きな一人暮らしの老人が、殺された。第一発見者である孫の梨乃は、祖父が大切にしていた鉢植えがなくなっていることに気づく。とても珍しい黄色い花が咲いたと喜んでいたことを思い出したのだ。気になって、祖父が撮ったその花の写真をブログにアップすると、植物学の情報収集をしているという男から「すぐにブログを閉鎖し、今後一切その花にはかかわらない方がいい」と一方的に言い渡される。祖父を殺したのは誰なのか。花は、祖父の死と関係しているのか。梨乃は、黄色い花を追ううちに知り合った蒼太とタッグを組み、真実に近づいていく。以下本文から。

「私はここで毎年種を蒔いている。神様から許された種だけを蒔いている」
「神様?」蒼太は老人の横顔を見た。
「変化アサガオは面白い。私のように何年も関わってきたものでも交配によってどんな花が咲くか完全には予測できない。それが面白い。しかしね、それは遺伝子を組み合わせる遊びでもある。崇高でもあるが、非常に危険でもある。だからそれを楽しみにするには神様から許された範囲内でなければならない」
「どういう花なら神様から許されるんですか」
そう訊いたのは梨乃だった。田原は優しげな目を彼女に向けた。
「それはわからない。生存を続ければ、許されているということになるんじゃないかな。あるものはあるがままに、というのが私の考えなんだ。逆にいえば、消えゆくものは消えゆくままに、ということになる。ある種が滅びたということは、滅びるだけの理由があったわけだ。黄色いアサガオが絶えたのにも、それなりの理由があったはずだ」

50年前の通り魔殺人。10年前、突然連絡を絶った蒼太の初恋の人。自殺した梨乃のいとこ。ぎくしゃくとした蒼太と兄の関係。いくつものからみあった糸がスッとほぐれる瞬間を存分に楽しめる推理小説だった。
そして、探偵役の若い二人には、それぞれ抱える葛藤があった。
「あたしたち、何だか似てるよね。一生懸命、自分が信じた道を進んできたはずなのに、いつの間にか迷子になってる」
そんな二人は、真相を追ううちに宿命から逃げずに生きる人の思いに触れ、立ち止まっていた場所から一歩を踏み出していく。「夢」と「現実」の狭間を生きる、人間というものを描いた小説でもあった。

柴田錬三郎賞受賞作だそうです。
タイトルの黄色が、怪しい花の雰囲気を醸し出しています。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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