はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『とにかくうちに帰ります』

津村記久子の短編集『とにかくうちに帰ります』(新潮文庫)を、読んだ。
6編ある短編のうちの4編 + 1編は登場人物が同じ連作短編の『職場の作法』『バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ』だ。タイトルの通り、そのどれもが会社内の様子を描いている。主人公で事務職20代の女性、鳥飼の目線がおもしろく、職場のひとりひとりが、クローズアップされていく。

依頼する人の態度によって書類作成の速度を決める女性社員。大らかな性格はいいのだが、誰のデスクにある文房具でも勝手に使い失くすおじさん社員。(プラスチック製の安物だが大切にしていたペン、ペリカーノジュニアを鳥飼は失くされてしまう)マイナーなスポーツ選手や海外の地名にやたら詳しい先輩OLや、咳をしつつもがんばりをアピールするのに必死になり社内にインフルエンザをまき散らす男子社員、自分の自慢をしたいがために女子社員に絡んできて最後には総好かんを食らう部長など。鳥飼のシュールな感覚に驚かされるシーンも多く、読んでいて楽しいOL小説だ。

表題作は、豪雨のなか家路を急ぐ会社員やOL、小学生を描く。以下本文から

わかります! とオニキリが叫んだ。橋の下で波がそれをかき消すように、ひときわ激しく互いを打ち合うのが聞こえた。
「給料も今のままでいいし、彼女もできなくていいから、部屋でくつろぎたいんです!」オニキリの、ある種の暴露に対して、ハラの反応は鈍かった。
そうか、とすら思わなかった。
「部屋でくつろぐためなら、大抵のことはやります。たとえば大雨の中をうちに帰るとか!」「そうだな」ハラは深くうなずく。
「べつに愛は欲しくないから、家に帰りたい」

読み終えて、人は、些細なことに必死になったり、小さなことを大切にしたりしているのだと再確認した。大切なことは、そう。たとえば牛丼を、肉とご飯の比率をきちんと計算しながら食べることだったり、またたとえば、ペットボトルの蜂蜜レモンを冷めないうちに味わうことだったりするのだ。

OL小説ということで、いつも仕事に使っているお気に入りの電卓と、
ペリカーノジュニアではないけれど、使いやすい普通のペン達と。
新潮文庫の文字まで、雨粒に入っているのが素敵な表紙です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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