はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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立冬、三日月、梟の声

夕闇。夜が降りてきた時間、三日月が美しかった。
その明るさに、雲達もみとれている。立冬というには、空気の冷たさは柔らかく、わたしもしばし見とれていた。

翌未明。わたしを目覚めさせたのは、梟(ふくろう)の声だった。
「ほう、ほう」と、夜の闇を壊さないようにと、そっと、しんとした声で鳴く。「ほう、ほう」羽音を聞いた気がして胸がざわざわし、やがて波は静まる。「ほう、ほう」心静かになるが、ちっとも眠くない。「ほう、ほう」覚醒のなか、違う世界から、たとえば夜からの誘いのようにも聞こえてくる。

ふいに、夜明け前の森を歩きたくなる。夜からの招待を受けたのだと言い訳し、ダウンをはおり、窓を開け、飛び出していきたくなる。
梟を探しに行くのか、三日月を追いかけていくのか、夜の闇深く入り込んでいくのか、凍っていく冬に囚われに行くのか。自分でも判らぬまま、飛び出していきたい気持ちを抑え込むように、ただただ毛布を引き上げる。

あれは、本当に梟の声なのだろうか。森の木や蔓が作り出した隙間を使い、北風の子が笛を吹く練習をしているだけなんじゃないだろうか。
探したところで梟など、何処にもいないのかもしれない。見つけたと思ったら、全く違うものに変わってしまうかもしれない。
森のなかを梟を追い、歩く自分を思ううち、ことりと静かに眠りに落ちた。

三日月の上、向こう側に、うっすら雲が見えています。

西の空には、まだ少しだけ夕焼け雲の赤さが残っていました。

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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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