はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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説明する人と、それを聞く人

週末、この夏初めて室内温度が30℃を越えた。エアコンがなくても過ごせていた夏は、何処へ行ったのか。
「涼しい場所まで、登ろうか」
夫の提案で、標高の高い方へとドライブすることにした。
「何処に行く?」「ノーアイディア」
やる気なく、だらだらとしたドライブだ。なんとなく北杜市も長野寄りに向かううち、県境の先、野辺山辺りなら涼しいだろうと、目指すことになった。
野辺山駅は、日本一標高の高いJRの駅だ。1345mある。走っていると、大きなパラボラアンテナのようなものが見えた。道標に『国立天文台・野辺山宇宙電波観測所』とある。行ってみることにした。

入場無料で自由に見学ができる、その広々とした場所には、ボーイスカウトの集団やら家族連れやらカップルやら、見学者がけっこういた。
陽が当たる場所は暑かったが、日陰は涼しかった。
「宇宙人って、やっぱり頭が大きな二頭身タイプ、思い浮かべるよね」
わたしが思いついたままに言うと、夫に冷たい目で返された。
「ここには宇宙人、いないから。宇宙からの電波を観測する場所なんだから」
「そうなの? いないんだー、なあんだ」
暑さにやられ、すでにわたしの思考回路は壊れてしまっていた。だが、前を歩くカップルを見ると、男性が女性に熱心に説明している。
「天体から放出される電波は、とても弱いんだ。だから、人工の電波が少なくて標高の高い野辺山で研究されているんだよ」
すれ違った親子も、父親と思われる人が小学生らしき息子くんに説明していた。女性同士の二人連れも片方が片方に、やはり熱心に話している。
「説明する人と、それを聞く人がいるんだな」
思考回路が回らないまま、ぼんやりと考える。そのとき、足もとに白線が見えた。長く道の先まで続いている。いちばん大きな電波望遠鏡の直径と同じ長さ、45mとかかれていた。
「電波望遠鏡の直径の長さは、このくらいあるんだよ」
足もとの白線を指さし、珍しく、夫に説明する。
「本当だ。気づかなかった。きみは、いろいろなところを見ているんだね」
えへん。と胸を張ったわたしは、じつは陽の光が眩しくて、足もとのみを見つめて歩いていたのだが、たまには説明する側に立つのも気持ちがいいものだなあと、少しだけ涼しい野辺山を、機嫌よく歩いたのだった。

こちらは、6台ある直径10mのミリ波干渉計です。

これが、世界最大級のミリ波干渉計、直径45mの電波望遠鏡です。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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