はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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記憶の扉を叩くもの

記憶の扉を叩くものには、様々ある。
例えば匂い。里芋を煮た時に、末娘が言った。
「ああ、お正月の匂いだぁ」彼女は、里芋の煮しめが大好きだ。
また例えば、目の前に広がる風景。霞がかった山々を見ると、東山魁夷の絵と、彼の絵が好きだった友人を思い出す。
そんな風に、単純に思い出す記憶もあれば、何かきっかけとなるものがあり、ぱたりと記憶の扉が開く場合もある。

洗濯物を、干していた時だった。
今年買った、辛子色のチュニックを干し、陽の光が温かにチュニックにそそぐのを見た瞬間、川崎に住んでいた頃の出来事を思い出したのだ。

もう15年以上も前のことである。
夫の辛子色のシャツは、ベランダの物干しで揺れていた。マンションの部屋は1階で、小さな庭がついていて、それが気に入って越したのだった。だが、幼い子どもとの生活に、慣れない環境に、庭いじりをするどころではなかった。それでも、その秋、庭に菊の花が綺麗に咲いた。もともと植えてあったものだ。放っておいても咲くものなのか。植物は強いものだと、ひとり納得していた。庭は西側で、西陽射すなか洗濯物を取り込もうとベランダに出た時だった。隣の老人が、フェンス越しに我が家の庭で咲く菊に水をあげていたのだ。
「ああ、ただ強くて咲いた訳じゃなかったんだ」
わたしは、洗濯物も取り込まず、そっと部屋に入って窓を閉めた。何故だか、声をかけられなかった。

そんなワンシーンが、あの部屋の匂いや、子ども達の幼かった姿や、いろいろな出来事と共に、温かに陽が射す辛子色のチュニックのなかに、通り過ぎて行ったのだ。物干し、辛子色のシャツ、温かに射す秋の陽射し。それが揃ってこそ、不意によみがえった記憶。一生思い出すこともない記憶だったのかも知れないな、と、チュニックの裾を丁寧に伸ばした。
   
夏の間、涼しく着て、これからの季節は重ね着で、重宝しそうです。
「裾を伸ばして、これ?」と、言われちゃいそうですが、
やわらかいガーゼの生地で、しわしわも、味の一つなんです。

このチュニックも、重ね着で楽しめますね。そう言えば、あろうことか、
娘がブログで家族を紹介していて「アジアン雑貨が好きな母は、いつも
不思議な服を着ている」とかいていた。ほっといてください(笑)
現在、チェコに滞在中の娘のブログは、こちら 『23歳、旅人いぶき』

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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