はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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夕闇の影絵

「夕暮れの田んぼを、観に行かない? たぶん山が綺麗に映ってるはずだよ」
夫に誘われて、町内を車で走った。夕暮れ時。午後7時前のことである。
風呂上がりだったわたしは洗った髪を乾かしもせず、フリースを着てカメラだけ持ち、夫の車に乗り込んだ。5月も後半のこの時期にフリースを着る寒さは、ここ山梨でもそう多くはなく、気温が下がれば下がるほどくっきりと見える山々が、なるほど綺麗に観えていた。

「ほら、鏡みたいでしょう?」5分と走らず、夫は車を停めた。
彼は、三脚を抱え一眼レフを肩にかけ、嬉しそうに撮影地点を探すべく歩いていく。わたしも、小さなデジカメを持ち、適当に歩く。
まだ田植えをしていない水を張っただけの田んぼは、本当に鏡のようにくっきりと、何もかもを逆さに映していた。

夕暮れから夕闇へ、そして夜の闇へと向かっていく時間だ。田んぼが作った鏡のなかの闇も、見る間に濃くなっていく。
もし光がなかったら、闇だけの世界になるのだろうか。だとすると闇は、光よりも遥かに大きな、根底となる存在だということだろうか。
濃さを増す夕闇に立ちすくみ、それが胸に抱えた闇と共鳴しないうちに、わたしは車に戻った。洗ったばかりの髪だけが、一滴の夜の闇を持ち帰っていた。

木々の影が、西洋のお城のように見え、手前の木々の葉は細かい影を作って
いて、藤城清治の影絵を連想しました。明野町御領平にて。

こちらは、八ヶ岳が映った田んぼです。村道を仁田平に向かう途中、浅尾で。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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